楽器の演奏は、少し前なら(今でも?)「習い事」の範疇でした。ピアノのお稽古、バイオリンのレッスン、三味線のお師匠さん、など等は、これらが習い事であるがゆえの呼び方です。サックスがいくら比較的簡単に音が出せる楽器だとしても、まったくの独学で超絶技術や豊かな音楽性にたどり着く人は少ないでしょう。ほとんどのサックス奏者は、専門の先生や先輩など、誰かしらにサックスを習った事があると思います。習う、教わるにしても、教えられる側の姿勢次第で、その効果は格段に変わります。演奏技術の向上、練習のヒント等については何度か紹介していますが、今日は「上手な習い方」についてお話しします。
表題の「何故何故くん(なぜなぜくん)」というのは、何でも質問してくる生真面目な生徒の事です。「タンギングはトゥトゥトゥトウという発音で舌を動かして!」、「何故トゥトゥトウトウなんですか?」、「そうすると息を断続的に切ることが出来るからだよ」、「何故息を切るのですか?」、「音を適切な長さで切るためだよ」、「何故…?」、果てしない問答合戦のようですが、レッスンで「何故」はとても重要です。教えられたことの原因、意味を知ることで、その指示の真意が理解でき、練習の方向性や自分に合った修正方法も導き出せます。とは言え、「何故?」が嫌いな先生も少なくありません。「黙って言う通りにやっていれば良いんだ。質問なんて10年早い!」と言われたら…、謝って黙っていましょう(笑)。レッスン後に自分で、そのときの「何故」をゆっくり考えましょう。仲間に聞いても良いでしょう。少なくとも何かを教えられたら、その指示に隠れた「何故」を探し、その「何故」を解決したうえで練習に勤しみましょう。
何故、何故にこだわるのか。それはあなたが「プレーヤー」だからです。音楽を聴いて感動する「聴衆」の側の人間では無く、音楽を通して感動を届ける、演奏者の側の人間だからです。聴衆に理屈は要りません。何故感動するのか、何故楽しく無いのかも、その理由を考える必要はありません。しかし演奏者は、何故聴衆が感動するのか、どうしたらどう感じるのか、どんな音がどんな感情を何故引き出すのかを考える必要があります。演奏者は常に「何故」を考える必要があるのです。もちろんあなたのサックス人生で解決した数えきれない数の「何故」は、いずれあなたの身体の中に溶け込んでしまい、意識からは消えてしまうでしょう。でもしっかり身体は記憶し続けます。
ステージ上で客席に向かい、美しい旋律があなたのサックスから放たれます。あるときは艶やかな音で、またあるときは透明感あふれる繊細な音で旋律を歌い上げます。そのステージが聴衆を感動させているのは、あなたのその音が、あなたの中に積み重ねられた無数の「何故」から導き出された音だから、だと思いませんか?いやあ、説教臭くてすみません。
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