管楽器が音を発するには空気が必要です。人間の身体から発する空気で管楽器は音を鳴らします。サックスにしろトランペットにしろ、音の根源である息の供給をおこなうための呼吸、そしてそれを楽器に最適化するための呼吸法は、楽器をより良く鳴らすうえで必須の技術です。呼吸法、ブレスについて考えてみましょう。
息を吐くためにはまず吸わなければなりません。サックスの呼吸法に関する教材では、多くの場合、この「息の吸い方」から学習を始めます。近年のサックス用呼吸法の解説には、 「背筋で腹腔を下側に広げ、肩甲骨を上げながら胸郭を広げて、瞬時に大量の息を吸い込む」、という上下から肺を引っ張って、最大限の空気を体に入れる方法が推奨されているようです。お腹の力だけで息をコントロールせず、身体全体で肺の容量を最大限にするという、「新腹式呼吸」とも言える呼吸法です。人間の身体の動きに関する限り、この方法が最善の方法です。「管楽器は腹で吹く」なんて思っていた方は、ちょっと頭を切り替えて、新しい吸気の理論を研究してください。「空気は肺にしか入らない→ならば肺を最大限に膨らませよう→下から上からそして前から肺を外側に引っ張る!」という概念から出てきた吸気法です。
解剖学的には理論立った呼吸法でも、サックス奏者の立場で考えるともうひと工夫がなされます。まず呼吸のサイクルを、「吐くと吸う」という2アクションでなく3アクションで考える呼吸法です。アクション1は「息を吸う為に息を吐き切り、かつ身体全体の準備をする。アクション2は「体全体でたっぷりの息を吸い込む」、そしてアクション3は「楽器を鳴らしながら、ゆっくりとコントロールしながら息を吐く」です。アクション1と2は瞬間です。アクション3は出来る限り時間を取る、「サウンド」のためのアクションです。楽器を鳴らしながらの呼吸では、無意識のうちにアクション1を奏者はおこなっています。これをあえて意識することで、スムースにアクション2に移行出来、より良い吸気が出来るようです。
たっぷりと息を吸うのは、長いフレーズを吹き切るためだけにする訳ではありません。サックスを鳴らしている間、リードの振動は楽器だけでなく、奏者の身体全体に共鳴します。血や肉には振動はあまり伝わりませんが、骨や肺の中の空気は、楽器から出るサウンドに影響を与えるほど振動するようです。なんてことを言っても、科学的な実験で証明されているわけでは無いようです。ただし経験的に、肺が息をたっぷり含んだの時に出すサウンドのほうが、息を排出しきる寸前のサウンドより「良く響く」という事は、サックス奏者の皆さんが実感していることではないでしょうか。限界容量の70%の息より、100%に近い息を吸ったほうが、絶対に良いサックスサウンドが得られます。沢山の空気が身体に力を与えてくれるのかもしれません。ということで、たっぷりと息を吸うのはとても重要です。良いブレスはサウンドにも確実に良い影響を与えます。
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