サックスのサウンドはタンギングで大きく変わります。サウンドの質がタンギングに決められてしまう、と言っても良いでしょう。それ故にサック奏者はタンギングに関する悩みが多いようです。「ハーフタンギングがどうしてもできない」やら「低い音域でタンギングが強過ぎてしまう」、「サブトーンのタンギングが上手くいかない」など等、多くのサックス奏者の方々から質問を受けます。確かにタンギングは重要課題です。しかしその正しい方法を教えるのも難しいのです。何故なら、「タンギングの方法は人によって違う」からです。
教則本やレッスンの先生達は、「ルルルルと舌を動かす」とか、「トゥリトゥリと発音しながら息を出す」等、「技術」や「方法」を説明して、生徒にタンギングを教えようとします。しかしこれも、「そんな感じ」以上の何物でもありません。「ル」という舌の形が、それに期待するサウンドで音を出せるかと言ったら、必ずしもそうではないのです。あえて言うなら、それらの方法論は、「近道」を示している事に他なりません。ルの形からアプローチを始めれば、切れ味の良い、強過ぎないタンギングで音を出すことにたどり着き易い、ということです。サックス奏者が注力すべきは、「ルルルルと舌を動かすこと」ではなく、耳当たりが心地よい音の始まり」なのです。
タンギングの練習は先生や教則本の指示する通りにやりましょう。そして空いた時間に夕ンギングで遊んでみたらどうでしょう。舌をリードに付けずに音を切ったり(エアータンギングと言います)、舌の真ん中でリードをペタペタ叩いたり(スラップタンギングの原型です)、口腔内を膨らませたり萎ませたり、舌の先でリードをツンツン触ったり、舌を付けたまま息を出し続けたり、思いの外、サックス演奏の為に「口の中でできる事」は多様です。そしてそんな遊びによってどんな音が出るか、出せるかを楽しみましょう。そのうちに「こうするとこうなる」の経験が色々と溜まってきます。「タンギング遊び」が「サウンド開発研究」に変わって来ます。まあ、お散歩しながら、道端の綺麗な花を見つけたり、運が良ければ100円玉を拾ったり、みたいな感じですかね。サックスと一緒になって音を作る、音を出すことを楽しむことで、新しい何か、自分が出したいサウンドのポイントを見つけようというやり方です。ハーフタンギングの按配の習得などは、この方法が一番だと私は思っています。
楽器を使った音楽は、楽器の奏法の方法論だけで作り出せるものではありません。常に持つべきは好奇心であり、自分の夢や目標です。そういうやりかたで身に付いた自分のサウンドは、人には説明し難いですが、自分で演奏するのは無理無く出来ます。自分で考え出して身に付けたものは、とっても素直に自分に馴染むはずです。
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