サックスのリペア道具、と聞いて思いつくのがリークライトでしょう。列になった小さな光源をサックス内部に差し入れ、管体内部から光を当ててパッドの密着度を調べる道具です。最近では通販で手軽に入手できるので、購入して自分のサックスの「息漏れ」を確認し、ご自分で調整されている方も多いようです。でも、息漏れの隙間って、状況によってはまったく音に影響しない、ってことご存知でした?実はサックスは「息漏れ」よりも「開いているパッドの角度」のほうが重要な場合が多いんです。
木管楽器は、「音孔(卜-レホール)」の開閉で共鳴周波数を変化させ、音階を出せるような機構になっています。単純に音孔を順番に開いて、構造的にパイプの共振周波数を上げていくだけでなく、離れた二つ以上の音孔を開けることで、倍音での共鳴をもさせて数オクターブの音域を実現しています。「気柱振動」という高校物理で習う理屈なのですが、難しいことは置いておきましょう。要は、「サックスの音孔(キー)でも、共鳴周波数に積極的に関与してる穴とそうでない穴がある」ということを覚えてください。例えばラの音を出すとき、そのために絶対開いてなければいけないトーンホールと、ぴったりと閉まっていなければならないトーンホールがありますが、「多少開いていてもあまり影響しない」トーンホールもあるのです。ですので、何らかのサックスのトラブルが生じたとき、リーグライトで隙間の空いたトーンホールを見つけ出し、それを完璧に治したとしても、その不具合が治るとは限らないのです。隙間が無いに越したことは無いので、その隙間は他の不具合の原因かもしれません。
トーンホールは「塞ぐ」ことだけに注意を払いがちですが、実は「開いている状態」もとても重要です。サックスにはかなりの数の音孔(トーンホール)と、それを塞ぐためのパッドがありますが、いくつかのパッドには、その開き角度を調整するための機構が付いています。調整ネジを締めるとパッドが音孔に近づき(角度が急になる)、ネジを緩めると音孔からパッドが離れる(角度が緩くなる)機構です。パッドが音孔に近くなると、その音孔が関与している音のピッチが低めになります。逆に離せば高くなります。リペアマンはサックスのバランス調整で、パッドのリーグ除去と同時に、パッド解放時の開き調整を必ずおこないます。
リークライトでパッドの隙間を見つけそれを治しても、パッドの開き角度を調整しなければ、正しい音程で音が出るようにはなりません。パッドの調整は「閉め」と「開き」の両方の組み合わせです。あなたがリークライトをお持ちで、ご自分でサックスの調整をしているサックス奏者であれば、是非パッドの閉めの調整だけでなく、開きの調整も出来るよう技術を習得してください。
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