ビッグバンドや吹奏楽等、日ごろの演奏を「譜面」でおこなっているサックス奏者は、いわゆる「白丸」と呼ばれる、全音符や二分音符を見ると安心します。馬鹿っ速い超絶フレーズの多いバンドのメンバーほど、その安心感は大きいでしょう。だって吹きながら休める(?)んですもの…。本当にそうなのでしょうか?
実は「白丸」との付き合い方で、音楽の質は大きく変わります。シンプルなところから攻めるなら、その長さです。記譜のルールから言えば4/4拍子の小節頭から始まった全音符の 「止める場所」は次の小節の一拍目が始まる直前です。一拍目に音があれば、その音との間隔はほぼ無いはずです。しかしこの記譜でそんな演奏をすることは非常に稀です。一拍頭の少し前で止めたり、小節内4拍目の頭で止めたりする場合がほとんどでしょう。曲を高い質で演奏するためには、アンサンブルをするメンバー内で、音を止める場所をきっちりと決めておく必要があります。そうしないと音の止め場所がメンバーによってバラバラになり、「だらしない決め」の演奏になってしまいます。合奏でロングトーン練習をするときは、止めの場所を決め、その止め方を合わせることも重要な練習の課題です。止めも大事なら「入り」も重要です。音を長く延ばす「白丸」はその音符の始まりもとても目立ちます。
アタックせずに「スーっと」始めるのか、「タンン~」と軽いアタックで始めるか、「トン、ワア~」とフォルテ・ピアノで始めるか等、音の始まりには千差万別のバリエーションがあります。この「音の始め方」は通常、譜面上にアーティキュレーション記号(演奏記号)を使ってその吹き方が指示されていますが、演奏の表現を統一するため、バンド内でしっかりと取り決めておくべき部分でしょう。伸ばし方も重要です。その曲に最適の音質、音量、ビブラート、表情、ピッチ等、演奏で留意しなければならないことが沢山詰まっています。例を挙げれば、一流のスイングジャズバンドは、ビブラートのタイミングをぴったりと揃え、繊細な曲の表情を作り上げています。
このように白丸は、「始まり」と「伸ばし」、そして「止め」というサックスの演奏技術が 「もろに出る」恐ろしいものなのです。一流のプロミュージシャンは、ロングトーンだけで音楽を表現できる、と言われます。高い演奏技術と濃厚な音楽演奏の体験により、どう音を出せば音楽になるか、が体に染み着いているが故の結果です。
アマチュアサックス奏者の皆さんでも、「ロングトーンを音楽にする」ように練習する事も大切ではないでしょうか。ロングトーンは「腕立て伏せ」のような筋トレ練習ではありません。あくまでも、良い演奏を出来るようになるための基礎練習です。色々な始まり方、色々な伸ばし方、色々な止め方でロングトーンの練習をしてみてください。そして「白丸」の吹き方を考え尽くしてみてください。演奏する音楽の質が、格段にステップアップすると思います。
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