皆さんはチューニングのピッチは何ヘルツに合わせていますか?「え、どういう意味?」という方もいらっしゃるかもしれません。結構奥が深い、基準音についてお話ししましょう。
五線譜の真ん中のラ(A)を440Hzに調律することが、1955年に国際標準化機構(ISO)によって決められました。それ以来、A=440Hzは音響器材の校正や、ピアノやバイオリンなどの楽器の調律の標準として用いられています。ところが、この国際標準はアメリカがそれ以前に国内で標準として使っていた周波数で、ヨーロッパではA=444HzやA=448Hzが今なお主流ですし、日本でもA=442Hzが実質的主流です。とはいえ、基準は単なる基準。奏者の好みでどうにでもピッチはコントロールできます。例えば古楽器であるチェンバロは、今もバロック時代の基準値A=415Hzで調律されます。時代によるピッチの変遷をたどると、15~16世紀ごろのルネッサンス期は466Hz、18世紀バロック時代後期には392Hz、モーツァルトは422Hz、1859年のフランス政府制定ピッチは435Hz、1884年のイタリア政府制定ピッチは432Hz、20世紀のカラヤンは446Hzのカラヤン・チューニングと呼ばれる標準ピッチを使っていました。凄い違いですね。
要は「基準音A=440Hz」という規格は、音楽をやるものにとっては、「ま、だいたいこの辺」でしかありません。実際に日本のコンサートホールやスタジオ、音楽練習室に置かれているピアノは、ほとんどがA=441~442Hzあたりで調律されています。高めのピッチのほうが、全体にハリのある音になるというのが一般的な意見です。電子キーボードが入ったバンドでは全員が「ピッチ調整」をすることができますので、高いピッチで合わせる傾向があります。アコースティックのピアノがバンドに入っている場合は、ま、ピアノに合わせるしかありません。
ヴィンテージのサックスにはローピッチモデルとハイピッチモデルがあります。サックスはネックへのマウスピースの抜き差しでピッチを変えるので、楽器の「落としどころ」のピッチを設定することで、「もうこれ以上マウスピースが入らない/抜けない」という問題を解消していました。世界中で標準ピッチが異なっていた事への対応ですね。不用意にヴィンテージのローピッチサックスを買ってしまうと、現代のバンドのピッチに合わせられない場合がありますので注意が必要です。
「奇跡のピッチA=432Hz」という言葉をご存知でしょうか?A=432Hzでチューニングされた音が、より美しく響き、調和がとれるだけでなく、脊椎や心臓で感じることができるという説です。「A=432Hzは、宇宙の規則性と数学的に一貫しており、意識や重力、磁気、物質は、A=432Hzで振動や光、時間、空間の性質を統一している。」、のだそうです。スマホのアプリで432プレーヤーというものがあり、普通の音楽音源のスピードを変えずに、ピッチを2%だけ下げて再生することができます。これを使って曲を聴くと、確かに音楽全体の雰囲気が少し変わります。感じ方は人それぞれだとは思いますが、是非一回聞いてみてください。音楽でのピッチの重要性が感じられると思います。
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