サックス奏者にとって必要不可欠なリード。これがなければサックスは音が出ません。そして「鳴るリード」を求めるサックス奏者の執着は、並々ならぬものがあります。リードに泣き、リードに笑う。それがサックス奏者の宿命です。で、リードってそもそも何なんでしょ?
目の前にあるリードは、ケーンというアシの一種の植物の茎を乾燥させ、薄くて長いヘラ状に加工したものです。リードの役割はサックス奏者の息のエネルギーを、楽器の音に変換することです。サックスが「ド」の音を出しているとき、リードは「ド」の音の周波数で振動しています。その振動が空気を震わせて、「ド」という音波になる訳です。サックスと同じように、リードの振動で音を出す楽器にハーモニカがあります。ハーモニカを分解すると小さな長さの違うリードが、ハーモニカの吹き込み口毎にずらりと並んでいます。ハーモニカは異なる音それぞれに、固有の振動数を持ったリードが付いています。
ですからハーモニカには、それが出せる音域の音の数だけのリードが取り付けられています。それに対し、サックスは一枚のリードでサックスの音域すべての音を出しています。この違いは、「共振」という物理現象が関わっています。ビンの口に息を吹き込み、「ボー」という音をさせる「ビン笛遊び」は皆さん経験があると思います。「ビン笛」の音の高低は、ビンの形やビンの中の液体の量で変えることが出来ます。同じビールビンを8本並べ、各々のビンに違う量の水を入れて調整すれば、「ドレミファソラシド」の出せる「ビン笛列」を作ることが可能です。ビン全体の「共振周波数」で音が決まるので、水を入れてビンの共振周波数を変えれば、異なる高さの音がでます。音のエネルギーの源はあなたの息ですが、それがビンの口の端で渦を作り、音の振動を作り出します。これを「エア・リード」と言います。フルートの原理と同じです。このときの振動の周波数が、ビン全体の共振周波数なのです。
空気はあらゆる周波数で振動することが出来ます。そしてサックスのリードもそのサックスの音域内のあらゆる周波数で振動しなければなりません。そして、リードの「鳴る・鳴らない」はこの「あらゆる振動数」というところに起因します。天然植物の茎から作られたヘラですので、「あらゆる振動数」と言われてもやはり無理があります。サックスの管体が作り出す共鳴の周波数に、どれだけ効率良く応えられるか、がリードの良し悪しです。サックスの全音域で「鳴り難い」リードでも、ちょっと切ったり削ったりすれば劇的な変化をする場合があります。そして慣れてくると、「うん、高音域が鈍いな、ここを削ろう」というようなノウハウの習得も不可能な話ではありません。「リードが鳴らない!」、とリードを恨む前に、「あらゆる周波数で振動しなければならない」というリードの酷な役割に同情してあげてください。
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