楽器を演奏する人間にとって、楽譜は切っても切れない必須の「道具」でしょう。モダンジャズのプレーヤーの中には、「楽譜も読めないし、コードの知識もない!」と言い張って、素晴らしい演奏をしてしまう「希少生物」もたまにいるようですが、やはり凡人プレーヤーには楽譜は重要な相棒です。そんな重要な「楽譜」ですが、その秘めたる能力が意外と見過ごされています。
楽譜は「良い楽譜」と「悪い楽譜」に分けられると思います(独断です!)。良い楽譜は読み易く、演奏し易く、導く音楽に生き生きとした力を与えます。悪い楽譜は読み難く、楽器の指が動き難く、なんか気持ち悪い楽譜です。細かく指摘しましょう。1小節の中に、「8分音符、4分音符、4分音符、4分音符、8分音符」(略して、8+4+4+4+8と書きましょう)があります。「タタ、ンタ、ンタ、ンタ」というジャズ特有の裏打ちフレーズです。この譜割は、「8+8+8休符+8+8休符+8+8休符+8」と記譜することも出来ます。この記譜のほうが、「表を休んで裏打ちを繰り返す」というフレーズの特徴がより分かり易くなります。そう、「より分かり易い」のです。プレーヤーによって、楽譜の記載への「分かり易さ」は異なります。主にジャズを演奏するか、吹奏楽を演奏するかでも違うでしょう。ビッグバンドかブラスバンドか…。トロンボーン奏者かサックス奏者か…。プレーヤーの演奏する音楽やスタイル、楽器によって慣れ親しんだフレーズも違うのですから、書いてある楽譜の「特徴」や「読み易さ」も異なります。ですから、楽譜は自分で書き換えましょう。手書きでもコンピュータの記譜ソフトでも良いので、自分に合わせて楽譜を書き換えることをお勧めします。手元の楽譜に何の問題もない場合は書き換えの必要はありませんが、少しでも「吹き辛い」と感じたら、楽譜を自分なりに書き直してみてはいかがでしょうか。
書き直しにはいくつかのコツがあります。付点4分音符と8分音符が並んでいたら、付点4分の領域の余白を、8分音符のそれの3倍取りましょう。1小節の中の音符の場所で、音符の長さやタイミングをイメージできるようにしておくと、とても演奏し易いです。逆に付点4分音符、8分音符、2分音符等の異なる長さの音符のスペースが同じにしてある譜面だったら、読んでいて凄く気持ち悪い楽譜になると思います。B(♯が5個)やD♭(♭が5個)なんて楽譜は、楽譜中の音符に臨時記号として♯や♭を書いてしまうのも良いでしょう。忘れないようにメモする感覚です。ジャズやポップスの楽譜なら、1行は4小節(か、その倍数)で記譜するのが妥当です。コード進行やフレーズの区切りが4小節や8小節になっているので、楽譜を追うのが超楽です。1行に5小節や7小節かおる譜面は、とても読み難いです。
優れた写譜職人が書いた楽譜はとても読み易く、楽譜から美しい音楽が聞こえてくるような感じすらします。大昔の写譜ペンによる手書きの譜面と違い、現在はほとんどがコンピュータソフトによる楽譜ですが、それでも写譜職人のセンスによって楽譜の良し悪しが存在します。難しい楽譜が配られたら、まず自分で書き直してみませんか。どんなハードな練習よりも、効果的な上達の早道になるかもしれません。
——————————————————————————————–
『イー楽器のお得情報』