今日のテーマは、改めて口にするのもばかばかしい位の常套句、「どうしたらサックスが上手になるか」です。しかしサックス初心者からプロ奏者まで、「どうしたら上手くなるか」は絶えず悩んでいることです。ぽんと、どうしたら少しでも近道が出来るんでしょう。一緒に考えてみましょう。
サックスを上手くなりたい自分としては、他の楽器から何かを「パクれないか」をしばしば考えます。同じ木管楽器の「フルート」や金管楽器の花形「トランペット」はどうなんでしょう。何か上手くなる特効薬がないのか聞いてみました。答えは皆同じ。「練習だよ!」でした。ですよね…。あ、でもフルートやトランペットの練習を見ていたら、何かが違います。同じ指使いで違う音が出ています。サックスは音に対して指使いが決まっています。サックスの「運指表」では基本的に全部の音に指使いが決まっており、ある運指をすれば、基本的に該当する音が出てくれます。オクターブ上はオクターブキーを押し、その上の音はサイドキーの操作で出てくれます。これって、他の楽器では信じられない「楽なこと」なんです。金管楽器は倍音の積み重ねと、それに対する管長の操作で音を出しています。トランペットでは第1バルブを押すと1音下がり、第2バルブを押すと半音下がり、第3バルブを押すと1音半下がる仕組みになっているので、唇で倍音の基音を出し、バルブ操作でそれを下げて音を出します。フルートもオクターブキーが無いので、唇から出す息のスピードや太さを変えて倍音を出します。
サックスは科学技術の力によって、特定の音を究極に出し易くした楽器です。奏者がさほど苦労しなくとも、指定された指使いさえすれば、決められた音が出てくれます。実はサックス奏者にとって、ここが大きな問題なのです。サックスはオクターブキーを押して、左手人差し指と中指を閉じれば「ラ」の音が出ます。しかしフルートは同じ指使いでもオクターブ下の音が出たり、他の倍音が出ます。トランペットも同様です。唇や口の中の容積、息のコントロールで、「ラを出そう」としなければ、「ラ」は出ないのです。サックス奏者のかなりの人たちが、「出ちやった音」でサックスを演奏しています。それを「出した音」にすればサウンドの質も向上し、コントロールの方法も明確になります。サックス奏者が出す音を意識して初めて、サックスと一体化した最高の音が出せるのです。
面倒臭い理屈を言いましたが、実践は簡単です。頭の中で出したい音の高さと音質を「歌う」のです。楽器なしで歌うときの喉、呼吸、身体全体の状態を意識して、その体勢で息を入れてサックスを吹くのです。これによってびっくりするほどサウンドが改善しますが、決して簡単なことではありません。歌いながらスケールを吹いてみましょう。歌いながらフレーズを吹いてみましょう。サックスそのものと奏者が一体になって音を出す。これが、サックスが上手くなる練習の原点です。
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