サックスは1840年代に、ベルギーの管楽器製作者、アドルフ・サックスによって考案された楽器です。
クラリネットやフルートなどの木管楽器の操作性や柔らかいサウンドと、金管楽器のダイナミックレンジ(音の強弱)や突き抜けるような音を同時に満たすために、木管楽器の構造を金属で製造したのです。
楽器の中ではかなり新しい楽器であるため、クラッシックのシンフォニーオーケストラでは出番がほとんどありませんが、吹奏楽、マーチングバンド、ポピュラーミュージックではなくてはならない楽器です。またサキソフォン・アンサンブルは、弦楽四重奏に引けを取らない絶妙なアンサンブル・サウンドを奏でるため、「サックスでのクラッシック」といえば、サキソフォン・アンサンブルを思い浮かべる人も少なくありません。
サックスの奏法は、当時パリ国立高等音楽院サクソフォーン科教授だった、マルセル・ミュール(仏 Marcel Mule 1901 – 2001) によって確立されたと言われています。
それまで軍楽隊等で多く使用されていたサックスが、ソロ楽器としての魅力であるその甘い音色と切れの良いサウンドを、ミュールがすばらしい演奏によって人々に伝えました。
ミュールの録音はほとんどがアナログSP版ですが、復刻CDを聞いてもそのしっかりとした技術っとサウンドは、現代の名プレーヤーにも引けを取りません。ヴィブラート奏法をクラシカル・サクソフォンの世界に導入したり、サキソフォン四重奏を確立したりと、ミュールの業績はサックスを躍進させました。
サックスはその構造から、プレーヤー独自の奏法やサウンドスタイルの幅の広さを許容しています。それによってサックスは数多くの個性的なプレーヤーを世に輩出し、決して「これがサックスの正しい音」というものを決め付けることは困難です。
ま、それゆえにプロからアマチュアまで、多くの音楽愛好家に「演奏する楽器」として愛されているのでしょう。サックス発明直後から、フランスのセルマー社がサックスのメーカーとして確固たる地位を築いていましたが、アメリカから始まった音楽、「ジャズ」の普及で様子が変わります。より個性が求められるジャズサックスの楽器市場で、アメリカ製のジャズ向けに設計されたサックスが脚光を浴び始めたのです。 (次回へ続く)
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