音楽の「楽」に引っ掛けた粋なタイトルのつもりなので、出来たら気付いてくださいね。今回は管楽器奏者の多くが経験している、「頑張り病」という恐ろしい病気の話しです。年長のベテランサックス奏者は、この「頑張り病」のことを、「若気(わかげ)の至り」とも言っていました。管楽器奏者の場合の「若気の至り」は、歳をとっても治らないものもあります。ではサックス奏者の「頑張り病」とは…。
テナーサックス奏者の皆さん、マウスピースのティップオープニング(先端の開き)はいくつですか?7、8、あたりですかね。でも、9とか10とか、なんとなく広いティップオープニングに憧れていませんか。伝説のブロー派のテナー奏者には、広いティップのマウスピースを使って、ゴリゴリと太い音で吹きまくる「ホンカー(テキサステナーとかブローテナーとかとも呼ばれます)」が数多く存在します。そんなレジェンド達に憧れて、「広いティップはカッコ良い!」なんてイメージを持っているのではないでしょうか。確かに広いティップのマウスピースは大きくて太い、独特のサウンドを出すことが出来ます。しかし必要な息の量やスピード、唇でのコントロールは超絶難しく、狂い易い音程を矯正するのも至難の業です。難しいからカッコ良い、挑戦する価値があるという考えもありますが、その努力や挑戦で得られるものの「価値」と「効率」を考えることが必要です。いくら太くて豪快なサウンドでも、音程が危うければ音楽としては考えものです。もの凄く頑張って、何かを失っているのではないでしょうか?
ロングトーンの練習は基本中の基本です。毎日5分、長く、揺れない音を息の続く限り延ばすことを繰り返します。唇の周りの口輪筋が鍛えられ、安定したアンブシャが完成していきます。長い息を出せるよう、正しい呼吸の方法も体に染みついてきます。…ですか?あなたがやっているロングトーン練習で、本当にそんな効果が出ていますか?決めた事だから、大事だからと、「頑張るための頑張り」になっていませんか?練習には練習の目的とその方法、進歩の確認、目標達成の確認方法等が必須です。でなければ、ただの「自己満足」で終わってしまいます。あるプロサックスプレーヤーは、「10秒で終わるロングトーンもあれば、10分でも納得できず、諦めて他の練習に移行する場合もある。要はそれで何を得たいかだよ。」、と言っていました。
背筋を伸ばして、胸を開いて、あごを軽く上げる。サックスの演奏姿勢の基本ですね。でも、これって「自然」ですか?この姿勢を実現するために、身体のあちこちに無理な力が入っていませんか?この姿勢をしようとするがゆえに、無駄な力を入れ、かえって喉が細くなったり、肩が突っ張ったりしていませんか?そうです、形だけを追った努力は、「百害あって一利なし」なんです。サックスの上達には努力は絶対必要です。何の努力もなしに、サックスで素晴らしい音楽を演奏できる人など居る訳がありません。しかし努力の目標は、「美しい音楽を演奏する事」であり、そのために頑張っているのではないでしょうか。自分の頑張りの効果、バランス、要否、など等、しっかり考えながら頑張りましょう。不必要な辛い頑張りは、プラス面よりマイナス面のほうが多いです。頑張り病には要注意です。
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