サックスを初めてうん十年になりますが、「サックス奏者候補生」の方々に必ずと言って良いほど訊かれるのが、「自分に合うサックスを見つけるには、どうしたらよいのですか?」という難問です。この問いに対する答えは有るようで無い、無いようで有る、といった禅問答のようなものです。
初めてのマイサックスを購入するときは、サックス奏者の先輩として信頼できる技術と経験を持ち、かつ自分の好みを理解している方に付き添ってもらう、というのが「優等生的答え」に他なりません。とはいえ、そんな理想的な環境にいるサックス志望者はそういらっしゃらないと思います。高い確率のストーリーは、「何も分からず吹奏楽部に入部→サックスをやれと言われる→学校の楽器で練習→後輩が入ってきたので、先輩にマイサックスを選んでもらう」、という「吹奏楽コース」か、「楽器店のサックス教室に入会→お店の推薦のサックスを購入(またはレンタル)→より良い楽器が欲しくなったので、先生に選定してもらう」、という「音楽教室コース」でしょう。どちらにしろ、誰かが傍にいてくれています。自分にサックスという楽器の良し悪しを見分ける力がないのなら、他人に頼るしかありません。売り手と買い手の微妙な関係であっても、楽器屋さんのスタッフに意見を求めるのは良い手段だと思います。
こんな回答はネットを検索すれば、千件はヒットしそうなコメントです。信じるか信じないか、実行するかしないかは別として、誰も勧めない、「自分に合うサックスを見つける方法」をご紹介しましょう。
楽器屋さんでもネットでも、自分の想定予算に合った、見た目の気に入った、「俺(私)がこれを吹いている姿は、良いかも」というサックスをとりあえず買いましょう。個体の差?性能?そんな難しい事分からないでしょう?唯一意味のある努力は、値引き交渉位です。サックスの始め方は何でも良いでしょう。独学、音楽教室、プロ奏者の個人レッスン、知り合いの「上手い人」の指導、など等、サックスを上達する道は無限にあります。そしてある程度サックスが吹けるようになったら、楽器屋さんで色々なサックスを試奏するなり、友人のサックスを吹かせてもらうなりして、自分のサックス以外のサックスはどういうものかを知ることに励みましょう。それと同時に貯金を始めます。サックス買い替え貯金です。自分の懐具合と、「サックス買い替えたい欲求」のバランスが取れたら、躊躇なくサックスを買い替えましょう。ちなみに下取り価格はあまり期待しないほうが良いでしょう。この買い替えを自分の音楽に対する価値観の範囲で、出来る限り繰り返しましょう。多分10年もすれば「自分に合うサックス」に出会えるはずです(気の長い話ですみません)。この方法を多くの識者が推奨しないのは、そのひとの所有する楽器に対する愛晴、愛着を考えてしまうことと、コストパフォーマンスがとても悪いからです。多くのプロサックス奏者が、「サックスはただの道具。そこから出てくるのが自分の音楽。楽器に愛着なんて全くない。」と断言します。楽器を必要以上に愛さないのが、自分に合ったサックスに出会うためのコツではないでしょうか。
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『イー楽器のお得情報』