楽器を演奏するものにとって、自分が生み出す音楽が、多くのひとの心に感動を与えることは最大の幸せでしょう。そしてプロかアマチュアかに関わらず、「自分の音楽」で聴衆の心をつかむということも重要です。多くの奏者は、「自分の音楽」や「自分の音」を探すのに長い時間を費やし悩みます。自分の音楽や自分の音を見つける近道は、やはり沢山のすばらしい演奏を聴く事に他なりません。もやもやしていたものを解決する、自分のサックスへのヒントを与えてくれる巨匠たちの演奏。独断に溢れたサックス奏者推薦をしてみます。
ソプラノサックスを演奏する方々には、大きく分けて二つの教材があります。ひとつ目はあくまでも優しく、気持ちの安らぎを誘う、スムースジャズの帝王「ケニーG」のソプラノサックスの演奏。そしてもうひとつは、挑戦的なモダンジャズフレーズを甘いソプラノサックスのサウンドに融合させた、「ジョン・コルトレーン」のソプラノ演奏でしょう。ケニーGのアルバムでは1992年に全米2位を記録した「ブレスレス(Breathless)」が有名です。またコルトレーンのソプラノは、「マイ・フェイバリット・ジンクス(My Favorite Things)」が誰もが知っている名盤です。
アドリブや個性的なソロは先の課題にして、まずは美しくメロディを歌い上げたい、というアルトサックス奏者には、「クローバー・ワシントン・ジュニア」のグラミー賞ベストR&Bソング賞を受賞した「ワインライト(Winelight)」をお勧めします。先のケニーGが若かりし頃、死ぬほどコピーしてさらったのが、このグローバー・ワシントン・ジュニアとのことです。メロディ優先のテナーサックス奏者には、「サム・テイラー」を推薦します。ムードテナーで有名な彼は、多くの録音アルバムが「ムード歌謡」のジャンルに入りますが、正確な音程、音の粒の立ち上がりの均一性、大きなタイムでフレーズを歌い上げるサム・テイラーの実力は鳥肌物です。バリトンサックスのメロディックな演奏には「サージ・チャロフ」を是非聞いてみてください。バリトンの巨匠、ジェリー・マリガンや、ペッパー・アダムスもすばらしい演奏を残していますが、早逝したサージ・チャロフは録音の数は多くありませんが、みな素晴らしい演奏ばかりです。
サウンドの研究には、アルトの「ダビッド・サンボーン」と「マルセル・ミュール」、テナーの「スタンレー・タレンタイン」、「ソニー・コリンズ」なんかはどうでしょう。真似は難しいと思いますが、彼らの音が「どうして出せるのか?」を、聴きながら、かつ吹きながら考えることは、サックスの奏法の基本に役立つはずです。サンボーンは「近代アルトサウンド」のサンプル、ミュールは「サックスの音の原型」、タレンタインは「ブローテナーの教祖」、コリンズは「変幻自在のサウンド」といったところでしょうか。
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