サックスという楽器はある意味面倒です。一般的に楽器屋さんに飾ってあるサックスでも、バリトン、テナー、アルト、ソプラノと4種類もあります。特殊な種類ではバスサックス、コントラバスサックス、チューバックス、ソプラニーノ、ソプリロ、なんてサックスたちもあります。音域によって違う種類のサックスがあるわけですが、こんなにバリエーションが多い楽器は管楽器でもサックスくらいでしょう。ま、祖先とも言えるリコーダーでは、同等に沢山の種類があるようですが。サックスを始めようとしている方々には、「どう違うの?」と質問され、既にいずれかのサックスを吹いているサックス奏者の方々には、「これとどう違うの?」、と訊かれます。ではアルトサックスとテナーサックスの違いを、ざっくりとお話ししましょう。
まずキーが違います。アルトはE♭調でテナーはB♭調です。「ド」を吹くとアルトはミ♭、テナーはシ♭の音が鳴ります。マウスピースの口径も違います。一般的に、音域が低いほうが太くて大きいマウスピースが必要です。リードの面積(長さと幅)も違います。流用することは出来ません。楽器全体の重さも違います。管体の全長が違うので、その分テナーのほうが金属がたくさん使われています。ストラップは同じものが使え、テナー用、アルト用の区別は無いようです。スワブ(内部を清掃する道具)はテナーとアルトでは大きさが違います。管の最小径が違うので同じものは使えません。テナーにアルト用のスワブを使えばスカスカですし、アルトにテナー用スワブを使えば、管の中で詰まること必至です。
もう少し突っ込んだ違いをお話ししましょう。テナーとアルトでは、奏者が口や息の調整でおこなう、「イントネーション(音の高さ)の補正」の方法が異なります。アルトと同じ吹き方でテナーを吹くと、微妙に「音痴な音階」になります。「ピッチの取り易さ」、という意味からいえばアルトサックスに利かあると思います。演奏に必要な息の量もアルトとテナーでは違います。やはり大きなテナーのほうが、息を沢山必要とします。ただし奏法がちゃんとしていれば、そんなに無理な息の量が必要なわけではありません。フラジオ(高音域)の運指もテナーとアルトでは少々違います。出易い音も違います。テナーは奏者・奏法の違いによる「サウンドの変化」が、アルトより大きいと言われています。ジャズのジャンルで言えば、「個性が出し易い」、逆にクラッシックのサックスアンサンブルのジャンルでは、「他のサックスのサウンドに合わせ難い」、ということになります。
テナーとアルト、どちらのサックスが取っ付き易い?と言われたら、「アルトサックス」です。大きさや重量も良い按配ですし、サックスの中では一番音が出し易く、かつ美しい音にたどり着き易いと思います。とはいえ、その後の苦労はそれなりに必要ですが、「入門サックス」には、私はアルトをお勧めします。
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