サックス お手入れ

愛器を撫でてみよう!

*サックスという楽器は真鍮等の金属で出来た、沢山の優雅な曲線で成り立っています。周りの光をその曲線が各所で反射し、複雑なメカニズムも細かく光を映し、その輝きは本当に美しく、誰もが魅了されます。しかしそれゆえに、「へこみ」に弱いことは、サックス奏者の誰もが熟知している事実でもあります。ズボンのベルトのバックルが少し当たっただけでも、サックスのボディはうっすらと凹んでしまう場合もあります。さあて困ったものです。管楽器の「凹み」は、サウンドに影響のない些細なものであっても、下取りの際には大きなマイナス査定ポイントとなります。管楽器販売関連の多くのプロがやっている、凹み確認のマル秘技をお教えしましょう。
 楽器屋さんやリペアマンさんが、白い布手袋をはめて楽器を触るのを見たことがあると思います。もちろんこれはご想像通り、手の油が楽器の表面に付着し、表面を汚してしまうのを避けるのが第一の目的です。しかし、手袋をはめていると良いことがもうひとつあるのです。それは、「楽器の表面の凹凸が細かく感じられる」、ということです。どこでも見る白い薄手の布手袋は、最近では100均でも買えますし、化粧品屋さんや薬局でも買えます。高額なものではないので、サックス奏者は是非この手袋を常備してください。この布手袋をしたうえで、自分のサックスのネックや、ボディのあらゆる部分を撫でてみてください。あらあら不思議、素手で触っても分からなかった凹凸が、手袋をすると非常に細かく感じられるのです。肉眼と素手ではまったくわからない、ネックのほんの少しの凹みでも、手袋越しに触れると、嘘のようにはっきりと分かります。光を映してみても分からなかった凹みや表面のうねりが、くっきりはっきりと指で感じることができます。

 この「技」でしか分からないような些細な凹みや歪みは、一般的にはサックスのサウンドにほとんど影響を与えません。ですので、自分の楽器を自分で演奏している分にはさほど必要な確認ではないでしょう。しかし、楽器を借りて演奏する場合や、逆に貸し出すときに、その楽器の状態をつぶさに確認するには役に立つでしょう。また、「音程がなんかおかしい。ネックが曲がっているのかな?」、なんてときに手袋をしてネックを擦れば、曲がって楕円になったネック管体が感じられるでしょう。また、中古楽器を購入するときの状態確認にも良いかもしれません。特にヴィンテージサックスなどでは、塗装が剥げたり、錆で表面が荒れていたりしているので、目ではなく、指で凹みや歪みを確認することは大切です。凹みを修理で直した後の微細な膨らみも感じることが出来るかもしれません。手袋をして愛器を撫でる。試してみてください。
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