サックスの値段は、まじ、ピンキリですよね。ネットでは新品で2万円台のサックスも珍しくありません。またヴィンテージのアメセルテナーでは、250万円なんて価格も見かけるようになりました。標準的な御三家(ヤマハ、ヤナギサワ、セルマー)のサックスでも、20万円台から50万円台あたりが標準価格でしょうか。なんでこんなにサックスの価格には幅が有るのでしょう。希少価値で値が吊り上っているヴィンテージサックスは例外として、サックスの価格はどう決まるか、を考えてみましょう。
サックスをひとつの工業製品として考えると、価格の差は意外と分かり易くなります。しかしサックスという工業製品のやっかいなところは、厳密な製品基準がない事です。時計なら一日の誤差が数秒とか、自転車なら安全基準など、工業規格や消費者庁の品質表示規定などで一定の基準が示されています。ところが楽器では、「ま、音が出れば楽器」的なものまで流通していますので、購入者は自分の目利きを信じて買うしかありません。このへんが実は価格の違いの原点になっているのです。
工業製品は、部品調達、組み立て工程、検品、販売など、大きなステップが必ずあります。製品コストを考えるうえで、これらの高低でのコストを安くすれば、仕上がった製品は安価で市場に出すことが出来ます。部品を安いモノで作れば部品調達コストは下がります。完成の精度、耐久性を落とし、多くの数量を発注すればコストを絞れます。組み立て工程では組み立て作業の複雑さを回避すれば良いでしょう。簡単な作業で短時間に組み立てられれば、その分コストダウンできます。検品は時間をかければかけるほど人件費が上がります。販売では数量が多ければ多いほど、また流通在庫を少なくすれば、販売経費が削減できます。この原則を元に話をサックスに戻すと、安いサックスの性格が分かります。安い部品はサックスの耐久性に影響します。値段の差はそのサックスが何年、楽器として活躍できるか、どの程度頻繁に調整が必要かに影響します。簡略化された組み立て工程のサックスは、予想外の根本的な故障が懸念されます。検品は楽器としての最終調整に掛ける時間です。この時間を省略すれば、音程や音質の精度が損なわれるでしょう。
もちろん安いサックスが皆、壊れやすく、楽器としての能力が欠落し、結局は買い替える羽目になる、なんてことは決して言えません。価格破壊の上質なサックスも市場には数多く出回っています。ただし総じて言えることは、低価格のサックスは品質のばらつきが多いようです。従って、購入の際には慎重に試奏する必要があると思います。また、故障の頻度も高いようです。リペアに出したら、修理代がサックスの値段より高くなった、なんて話も珍しくはありません。また調整のし難さも、リペアマン泣かせのようです。良い楽器はどんなに狂っても、元通りに調整し直すことが可能です。
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