管楽器の奏法のあるべき姿は教則本などで提示されています。先生も「あるべき姿」を生徒さんに教えてくれます。しかし実際の奏法はというと、あるべき姿からは微妙に違いが出てきます。伝説のトランペッター、ディジー・ガレスピーは吹くときにカエルのように頬を膨らませています。またアルトサックスのレジェンド、ディビッド・サンボーンは、かなり右下寄りにマウスピースを咥えて吹いています。どちらも素晴らしいプレーヤーですが、その奏法は「あるべき姿」としては教則本で取り上げられてはいません。今日はサックスやフルート、金管楽器のアンブシャを決めるときに重要な、「水平感覚」についてお話しします。
「真っすぐ」、「中心に」、「90度」等の言葉は、管楽器のアンブシャを説明するときに必ず出てくる重要な単語です。「口の中央に、真っすぐにマウスピースを差し込みます。」、なんて基本ですよね。「顔に対するマウスピースの上下角度はほぼ90度。口の上側から、また下側からマウスピースが口に入っていくことの無いよう注意してください。」、なんていうのも定石です。マウスピースとリードを正しく機能させるには、口から効率良く息をサックスに送り込んでいくことが大事です。また口腔(口の中)の最適な位置に、マウスピースはいなければなりません。そのためには「中央」や「90度」は大事なキーワードです。しかしこれらはご存じのように必須ではありません。人それぞれにあごの形も違えば、身体の大きさによってマウスピースを咥える角度も違ってきます。しかし、「自分なりの吹き方」がどの程度標準からずれているかをご存知の方は多くはないでしょう。
マウスピースに対して割り箸が十字になるよう輪ゴムで固定してみてください。マウスピースの左右に長く割り箸が飛び出た状態でマウスピースを咥えると、顔に対してマウスピースが「中央で真っすぐ」か、ということが確認できます。横からは鏡を使うか、スマホでマウスピースを咥えた自分の横顔を撮影してみてください。マウスピースの上下の角度が確認できます。また咥える深さも客観視できます。このような工夫で、標準的で正しいアンブシャとの誤差を確認し、自分のアンブシャはどのくらいずれているかを認識しましょう。どうしてそんな面倒なことをするか、ですって?自分の「ずれ幅」を分かっておくためです。そうすれば、自分の課題に対しての解決方法が、意外と簡単に見えてきます。サブトーンが出し難いのは、マウスピースを咥える角度が原因かもしれません。サブトーンは息がリードに当たる角度が影響します。高音域の音がにごるのは、口の真ん中で咥えていないからかもしれません。下唇がリードの左右を均一に締め付けていないと、音がにごったり、音程が安定しません。このように、アンブシャや演奏姿勢の水平感覚を意識して自分の奏法を確認することは、サックスの演奏技術向上にとても役立つはずです。
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