最近のサックス奏者の間では、しっかりと「オーバートーンの練習」の重要性が認識されてきているようです。オーバートーンはサックスの演奏技術のなかでもとても重要です。しかし、「どうしてオーバートーンの練習が必要なのか?」については、あいまいな理解も多いようです。今日は何故オーバートーンの練習が必要なのか、についてお話しします。デーブ・リーブマンによる「サキソフォーン上達法」の教則本の中で、オーバートーン(倍音)の練習の必要性とその方法について詳しく解説されています。それを繰り返すのも芸がないので、もう少しわかり易くオーバートーンの練習の必要性について説明します。「そんなのウソじゃん!」なんて表現や説明がありますが、「ある説」のひとつとして聞いていただければ幸いです。では早速かなり乱暴なサックス構造論から。
サックスの音は「出ちゃう音」、「出る音」、「出せる音」に分かれます。普通にサックス奏者が吹いている、「ド、レ、ミ、ファ、ソ…」の音は「出ちゃう音」です。メーカーはこの音をいかに簡単に、また良い音で、良い音程で出すために調整します。吹けば簡単に出てしまう、サックスの音です。次の「出る音」は替え指やちょっとした喉のコントロールで出るフラジオ音や、標準外運指の音です。最後の「出せる音」とは、喉や口腔のコントロール、息のスピード、角度、アンブシャの操作によって、ヒョッとしたら出すことが出来るかもしれない、サックスの構造上の能力です。この「出せる音」が倍音列です。倍音はそのサックスの音色を豊かにする成分です。倍音を意識的にならせる奏法を身に付ければ、「出ちゃう音」の倍音成分が変わり音質が向上します。向上と言うよりは、サックス本来の能力が完全に引き出せると言えるかもしれません。「出せる音」を出せるようになることで、サックスの能力を最大限に利用することが出来、サウンドも最高のものが得られる。逆に「出る音」だけでサックスの音楽を作ろうとすることは、サックスの一部の能力しか使っていない、もったいない事だ、ということです。
サックスという楽器は、あまりにも簡単に「音を出し始めることが出来る」ため、突き詰めた奏法や、出せる音の追求がおろそかになりがちです。オーバートーンの練習は、「ここまで出せた」とか「これより上が出ない」ということがままありますが、自分の奏法がサックスの能力を最大限に生かせるようになるための練習であり、終わりのない練習だと理解して続けることが重要だと思います。かなり無茶な例えをしましたので、異論がある方々には陳謝します。笑い飛ばしてください。
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