突然ですが、ピアノは調律師によって調整されますよね。調律師はピアノの88鍵(または73鍵)の一つ一つの音を確認しながら、一台のピアノの音を作り上げます。それに比べてサックスの「音作り」は雑です。あなたの吹いているサックの音は毎回同じですか?「同じです」と答えられるサックス奏者はほぼ皆無でしょう。サックスの音は吹き方でも、フレーズでも、また吹く環境によっても変化します。その変化や不安定さを、「サックスは人間らしい楽器だよ!」と肯定的にとらえ、不安定な音をサックスらしいと言う人すら少なくありません。それで良いのでしょうか?少なくとも「嫌な音」はしっかりと避けるべきではないでしょうか?今日はサックスの雑音の話しです。
サックスという楽器の面倒臭いところのひとつに、「出すべき音色」があいまいで、かつ音色の許容度があまりに広いことがあげられます。例えばクラッシックのサックスアンサンブルのテナーサックスの音と、ばりばりの古典派ジャズテナーのサブトーン。多分多くの人がこの二つの音は違う楽器で出されていると考えるはずです。それだけ両者の音質は違います。この違いに私は異存ありません。だって表現するものが違うのですから。しかし両者のサウンドに対する姿勢の差は注目すべきだと思います。サックスアンサンブルのサックス奏者は、メンバー全員の音色をそろえる為に大変な努力をしています。楽器のメーカーや製造ロットをそろえる、なんてことも当たり前です。比べてジャズサックス奏者は…。ま、かなり大まかです。ジャズの場合、音色イコール個性ですから、「その人の音」であれば良いとされています。これも私は否定しません。ジャズらしいと思います。しかし、「音質に対する大きな許容度」に隠れた、「雑音への対処」を忘れてはいないでしょうか?
リード上の水分で生じる、「チリチリ」というマウスピース内部の音。雑音です。フラジオ運指で出した高域音に混ざる他の周波数の音。雑音です。低い音でサブトーンを出すと出てくる倍音。雑音です。フレーズに馴染まない籠った「レ」の音質。雑音です。サックスが構造上出してしまう雑音はもっとたくさんあります。あなたのサックスが出した、少しでも不本意な音質は、あなたの演奏にとって雑音です。雑音は工夫や努力によって克服することが出来ます。しかし雑音に気が付かなければ対処も出来ません。ピアノの調律師の様に、真剣に自分の音をひとつひとつ確認することもたまには良いのではないでしょうか?雑音を見付けて駆逐してください。そういうジャズサックス奏者が増えれば、「ジャズサックスの音は汚くて嫌い」なんて言われることも無くなるのではないかと思う次第です。
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