サックスではマウスピースの咥え方、いわゆるアンブシャがとても重要です。良い音、安定した音、また音楽性を高めるニュアンスを音に与えるためには、このアンブシャの良し悪しが大きく影響します。サックス奏者にとっては「アンブシャを固める」ことはとても重要な課題であると同時に、必要に応じたアンブシャの修正もまた、サックスによる良い音楽を維持するための課題です。唇の形やマウスピースの咥え方で、「シンリップ」、「ファットリップ」、「ダブルリップ」等、アンブシャは呼称も形も様々です。またサックスの先生や部活の先輩達による、「教え方」も様々です。正直言って、すべてのアンブシャは「あり」です。自分に合った、また、表現する音楽に合っていて、自分の出したいサックスの音が出せるなら、どんなアンブシャでもOKだと思います。しかしアンブシャの基本的な必要条件を思い起こし、自分のアンブシャを点検することも重要です。今日はアンブシャの原点を考えましょう。
アンブシャとは、ひとことで言うと「息のパッキン」です。パッキンとはビンや水道、ガス関連で使われている、あらゆる液体や気体を「漏れずに閉じ込める」ための、柔らかなゴムやシリコンで出来ている「詰め物」です。サックス奏者は、上下の唇でサックスを鳴らすための息の空気を、マウスピースの周りから洩れてしまう事を防ぎます。これがアンブシャです。サックスのマウスピースの構造を考えると、一番息漏れしそうなのが両サイドです。唇の左右の筋肉でしっかりと息漏れを防ぐことが重要です。アンブシャの上あご側は「パッキンのズレ止め」機能です。前歯をマウスピースに立てて、口とマウスピースの関係が安定するように支えます。ガッツリと噛み込む必要はありません、あくまでも支えです。サックス奏者がマウスピースに接触する唯一の硬いところがこの前歯です。支えの機能が過剰になっていないかどうかチェックしましょう。
さて残るはアンブシャの下側です。ここからの息漏れを防ぐのはちょっと厄介です。ここにはマウスピースの心臓部として、息を音にする振動を作る「リード」があるからです。むやみに息漏れを防ぐだけでは、リードの振動を邪魔してしまいます。アンブシャの下唇は、息漏れを防ぐと同時に、リードが最大限に振動出来るよう支える必要があります。下唇の柔らかい部分をペッタリとリードに付けてしまえば、リードの振動が吸収されてしまいます。かといって唇を内側に巻き過ぎて、唇の外の硬い皮膚をリードに付けたり、下あごで締め付けすぎてもリードが「押さえつけられて」しまいます。リードに接触するベストな部分は、下唇の下の端、柔らかい唇が硬くなる境界です。唇のこの部分を軽くリードに当てる事で、息漏れを防ぐと同時に、リードの自由な振動を阻害せずに演奏できます。下の歯で下唇を噛む必要はありません。その力はリードの振動を妨げます。どうでしょう?自分のアンブシャは基本に則っていましたか?
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