ヴィンテージサックスを所有するサックス奏者の中には、「サックスの臭い」に悩まされた方が多いのではないでしょうか。まっさらの新品のサックスは、ケースから出した時、臭いと言えばケースの接着剤の臭いくらいです。サックス自身が臭いといったことは無いでしょう。しかし何十年も前に製造され、何人ものオーナー、何年もの貯蔵期間を経て来たヴィンテージサックスの中には、耐えがたい臭いを持っている物も少なくありません。新しいサックスでも保存方法を誤れば、「臭い立つサックス」になる可能性は十分あります。今日はサックスの臭いとの戦い方をお話ししましょう。
いやなサックスの「臭い」は、基本的にアンモニア系の腐敗臭です。金属のサビ自身はほとんど臭いません。どこかで何かが腐ってバクテリアが発生し、アンモニア系の臭いを放っているのです。サックスの臭いの「宝庫」はU字管の底の内部です。吹いた後の掃除を怠ると、息の水分がサックスの底に溜まったままになります。水分が周りのホコリやカビ菌、空気中の浮遊物や唾液のタンパク質成分を取り込み、それらが乾いて固着します。そこにまた水分が来て「湿った場所」になればバクテリアは喜んで繁殖し、アンモニア系の悪臭を放ちます。そのサックスが頻繁に使われていた頃はさしたる臭いでなくても、それが保存され、長い間放置されれば、想像を絶する臭いがサックス内部に「定着」します。その臭いは保存のケースの中にも吸着され、ケースごと「臭いの中のサックス」になるわけです。
実はサックスは丸洗いできます。ちょっと手間ですが、分解洗浄をリペアマンに頼むのが、臭いをサックスから取り去る最善の方法でしょう。この場合はパッドも全交換したほうが良いでしょう。金属以外の部品をすべて取り払い、管体の内外を超音波洗浄します。ここまでやればサックスのほとんどの臭いは根こそぎ退治できます。多少作業の値は張りますが意外と簡単です。サックスを傷付けることもありません。手強いのが「ケースの臭い」です。ケースは分解洗浄出来ませんので、気の長い闘いです。緩衝剤のスポンジからホコリを叩き出し、消毒・除菌、そして乾燥。これを臭いが無くなるまで繰り返します。場合によっては、ケースの木材や内部素材の奥深くに臭いや菌、ダ二等が浸み込んでいるので、決して簡単な戦いではありません。ゴキブリ退治のために部屋で煙式の殺虫剤を使う際、その部屋にふたを開けた臭いサックスケースを置いておく、という方法でアンモニア臭を解消したという話は聞いたことがありますが、その後は殺虫剤の臭いとの付き合いとなった、というオチがあります。
しつこいケースの臭いには、早く見切りをつけてケースを買い替えるのが得策だと思います。歴史的価値のある、また職人のこだわりによる高級ケースの場合は、「外だけ残して、内部は全部取り替え」という荒業を選択するのも良いかもしれません。しかし、ケースをオーダーで作るほどの金額になりますのでご注意を。
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