サックスという楽器は、1954年頃に発売されたセルマー社のマークVIでメカニズムがほぼ完成され、それ以降は大きな技術改革はなされていない、というのがサックスの進化に対する通説です。しかし、この説はかなり大雑把なもので、サックスは常に進化をつづけている、「近代管楽器の雄」なのです。1840年代という超近代に誕生し、またたく間に世界の音楽のなかに浸透してきたサキソフォンという管楽器は、まさに「時代の最先端を突っ走る」楽器です。その進化の深い部分を見てみましょう。
サックスは「工業製品」ですので、その進化は「製造技術の進化」が原点となっています。シンプルな部分では、管体素材の真鐘板金(しんちゅうばんきん)です。「工業規格」が浸透する第二次世界大戦以前は、板金の質は非常に不安定でした。板金の組成、厚さ、密度の均一性は、それが使われる楽器の音質に大きく影響しますが、その材質が安定してきたのは50年ほど前からです。またサックスには、軟らかくて加工し易く、響きが良いという理由で、もっぱら「真鍮」が使われてきましたが、近年では加工技術の向上から、銅成分の多い真鐘や洋白(ジャーマンシルバー)、ブロンズ等もサックスの材質として使われるようになっています、加工技術の進歩はサックスの「作り方」にも変化をもたらしています。サックス管体の上を縦に走る無数のシャフトを支える「キーポスト」は、通常管体に「ロウ付け(はんだ付けのようなもの)で接着されますが、近年のモデルでは「スポット溶接」で取り付けられている機種が有るようです。高圧電流で溶接されたキーポストは、サックス全体の振動効率を高め、耐久性も高くなっています。また表面処理のラッカー等の材質も良くなっています。錆びが出難く、光沢が持続するような良質な塗料が開発され使用されています。
サックスのメカニズムそのものも進化しています。通常とは反対側の、ネックの下側にオクターブキーホールを空けたサックス。キャノンボールサックスの一部で採用されています。反応が速く、太い音が出るそうです。またセオ・ワニーのサックスでは、特殊構造のオクターブキーが現れました。オクターブキーのメカニズムがネックから音響的に独立し、ネックの響きへの影響が最低になっています。イオというサックスブランドでは、セライバ・フリーシステムというものを開発し、ネックから管体内部に特殊構造を採用することで、ネックからの水分の流れをコントロールし、トーンホールからの水分漏れをシャットアウトしました。他にも多くのメーカーが独特の進化した設計を採用し、「より良いサックス」に向けて常に進化し続けようとしています。製造・加工技術の進歩、材料の進歩、またコンピューターによるシミュレーション技術はあらゆる工業製品の変化の礎になっています。これからも、「新しいサックス」がどんどん出てくる事でしょう。
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