サックス奏者にとってネックコルクは非常に近しいサックスの部分です。なにせサックスを吹こうと組み立てるたびに、マウスピースを差し込み、「クイクイ」とピッチ調整をする部分がネックコルクです。マウスピースを抜き差しするため、ネックコルクは消耗部品です。また、新しいマウスピースに替えた場合には、ネックコルクを削ったり交換したりの調整も必要です。今日はそんなネックコルクの話しです。
ネックコルクはネックにマウスピースを隙間無く結合させるためのクッションです。クッションであり、かつマウスピースからの振動をネックに伝える連結部でもあるので、そのサウンドへの影響も少なくはありません。プレーヤーの中にはコルクの接着剤にこだわる人もいるようです。ネックコルクをネックに接着するには、パッドの固定などに使う、熱で溶ける接着剤「シェラック」を使うのが最近では一般的ですが、硬化の遅い万能ボンド類の溶剤系の接着剤を指定するプレーヤーもいます。これはシェラックが乾燥後に「硬く」なるのに対して、ボンド系は「柔らかく」なり、ネック材とコルクの間のほど良いクッションとなるからです。接着時の塗布の厚さによっても違いますが、シェラックとボンドでは吹奏感が微妙に変わります。同じシェラック接着でも、接着部分のシェラックの厚みによっても吹奏感が変わります。薄い塗布は接着不良になり易いですが、逆に厚めの塗布はコルクがグラグラする感じが出る場合もあります。ネックコルクの接着は、簡単なようで奥の深い技術のようです。
ネックコルクの長さにもこだわる人がいます。ネックコルクの長さを通常より15mmほど長く巻く、「アメセル巻き」と呼ばれる巻き方があります。確証の無い言い伝えではありますが、ジャズのプレーヤーは緩いアンブシャのファットリップが多く、ピッチが全体に下がるため、ネックの部分により深くマウスピースを差し込めるようにコルクを長くしておく、ということだそうです。逆にマウスピースからはみ出た部分のネックコルクは「ネックの振動を阻害する要因」として、自分のセッティングが決まったら、それに合わせて余分部分のほとんどを切ってしまうサックスプレーヤーも居るそうです。
ネックコルクの仰天トラブルもちょっと紹介しましょう。もしあなたがハードラバーのマウスピースをお使いで、そのマウスピースをネックに差し込むときに、「硬めかな?」に加えて「ちょっと引っかかるかな?」のような感じがしたら、マウスピースにリードを着けずに、マウスピースのテーブル面の「差し込む前と挿した後」の形を確認してみてください。ひょっとするとネックに挿したマウスピースのテーブルが膨らんでいるかもしれません。ネックコルクがマウスピースの内側を押し上げているんです。ちゃんと調整されていないネックコルクは、こんなトラブルも発生させますのでご注意を。
——————————————————————————————–
⇒Vandoren バンドレン Klassik クラシック リガチャー ソプラノサックス用
——————————————————————————————–