楽譜で演奏するビッグバンドでは、演奏の難易度を譜面の印象で示す言葉が沢山あります。「縞々だらけ」というのは音符の符尾(旗)が多い、16分音符や32分音符だらけの、速く難しい運指の譜面です。「電信柱」は五線紙から飛び出した、高いミやファ、それ以上の高音域の記譜を指します。「こんな電信柱だらけの譜面、音出ねえよ!」、と言う感じで使います。とにかく難しいフレーズ、譜面は、「指が回らない」のが難点です。今回は、「指が回らない理由」、また「克服の仕方」を考えてみましょう。
指が回らない理由の80%は「練習不足」です。こんなことを言うのもなんですが、回るまで練習するのが練習です。まずは何も考えずに100回練習して、どうしてもうまく演奏できない状態なら、別のことも考えたほうが良いでしょう。それまではひたすら頑張ってください。で、それでも回らない場合はどうするか。フレーズの研究です。指が回らない理由、自分の演奏技術、解釈で間違った演奏の仕方をしていないかを徹底的に考えます。フレーズの継ぎ目、タンギングのポイントの変更、音符のアーティキュレーション(細かいニュアンス)の変更や修正で、まわらない指が回るようになることは珍しくありません。特にサックスのタンギングはフレーズのスピードに大きく影響しますので、「タ、タ、タ、タ」を「タ、ル、ル、タ」にするだけで、スピードに追い付けた、なんてことは珍しくありません。またジャズやポップス系では、大事な音と、そうでも無い音の差があります。クラッシック系の音楽では、装飾音符もしっかりと記譜通りに吹いて、周りと合わせる必要がありますが、ジャズの場合、「そこの装飾はリードアルトだけが吹けばいいよ!」なんてフレーズが少なくありません。もちろんプロの奏者達、バンド達はしっかりとそんな場所も揃えて素晴らしい演奏を披露します。しかしアマチュアが100点のみを目指すのも考え物です。80点を目指して、「やばい」ところは吹かない、という解決策もアリだと思います。
さあ、お待ちかね。回らない指の誤魔化し方です。まずはバンドの皆に告白し、解決法を相談しましょう。ユニゾン(同音)のフレーズなら、「しようがないなあ、じゃあ、聞こえないように小さい音で吹いて」で解決するかもしれません。ハーモニーのパートなら、「ここだけはしっかりと吹いて、あとは捨てよう」と言われるかもしれません。とにかく回らない指の克服は、バンドのメンバーと一緒に考えるべきです。自分一人で分からないように誤魔化せるのは、超一流の奏者か、まわりから相手にされていない4流奏者だとおもいます。「相談!」、これ重要です。バンドのことを良く分かった指導者やコンマスがいる場合は、「大事なこことここはしっかり吹こう、ここでモタると次の頭が遅れるので、軽く吹いて頭は合わせよう」等の、バンド全体での誤魔化し方を提示してくれます。音楽は「完璧」が「美しい」とは限りません。適当に美しく誤魔化しましょう。
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