サックスはどこから音が出るかご存知ですよね。見た目からも感じられるように、その大きなベル、朝顔から多くの音が出ています。ただし、「笛系楽器」の宿命として各トーンホールからも音が出ています。サックスのベルとトーンホールからの音。これらはあくまで「聴衆が聴いている音」の出どころです。奏者が聴いている自分のサックスの音は、もうちょっと複雑に奏者に伝えられています。今日はサックス奏者の自分の音の聴き方、またどう聞こえるべきかなどについて考えてみましょう。
奏者に届く自分のサックスの音の伝達経路は沢山あります。まずはマウスピースに立てた上前歯から頭蓋骨にかけて伝わる振動。この音による判断で、「マウスピースの良し悪し」を決めてしまう奏者が少なくありませんが、実はこの「歯からの音」と「聴衆に届いてる音」とはかなり違う場合が多く、「無駄な出費」や「いらぬ悩み」を生んでしまっていることもあるようです。次に考えるべき音の伝達経路はストラップです。サックスの重み、という圧力がかかっているので、首に伝わる音の振動はそれなりにあるようです。首は聴覚器官にも近いので、それなりの大きさで音を感じます。試しにストラップを外してサックスを吹いてみると、その感覚が分かります。あ、奏者に届く音で、あとひとつ無視できないのが、「ネックの振動」です。ネックは自分の目の前にあるサックスの最も近い部品で、かなり振動しています。観客には届きにくい音ですが、奏者にはビンビンに聞こえてきます。一部のレコーディングエンジニアは、ベル前、左手の前、ネック前の3か所にマイクを置いてサックスの音を録音するそうです。これで「サックスの音のすべて」が録音出来るとのことです。
さて、今度は自分に聞こえてきた自分のサックスの音をどう処理するか、です。一番の基本は、「相手にするな」、だと思います。演奏者の音のすべては「聴衆」の為のものです。自分にどう聞こえようが関係ありません。マウスピース選びや、アクセサリーの音への影響は、あくまで「録音して確認」すべきです。「自分にどう聞こえるか」、は間違った選択を引き起こす原因にしかなりません。とはいえ、何でもいちいち録音して判断する訳にもいきません。自分の奏法の細かい変化でどう変わるかを確認したい、等の要素を考えると、自分に聞こえる音を何かの「ガイド」にする必要性は否定できません。
一番使うのが、「歯からの音」です。右手の指を耳に差し込んで、チューニングトーンを吹いてみましょう。他の音がマスクされて、自分の楽器の音だけが聞こえます。チューニング時には役に立ちます。もうひとつの聴き方は、ネックからの音とベルからの音の差を感じる方法です。両者は聞こえてくる場所が違うので、ちょっと集中すれば違いが分かります。それでベル音が大きく、ネック音が小さい場合は「そば鳴り」の音が散ってしまっている状態です。「おまえ、音が小さくて聞こえないよ!」と仲間に言われるケースです。逆にネック音が大きく、ベル音が小さい時は、音が前に飛んで、「遠鳴り」してると考えられます。そのほかにも色々ありますので、自分なりの工夫を考えてみてください。
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