サックス奏者は楽器やマウスピースの、固有の音質に非常に注目します。また、それらを自分で吹いたときにどんな音質になるかも常に考えています。自分の奏法でどれだけ色々なサウンドを出せるかにも努力を惜しみません。そんな「音質フェチ(笑)」のサックス業界(?)には、独特の「音質を表現する言葉」が多数存在します。皆さんが仲間とサックスの音質談義をする際の、「表現力の幅の向上」のため、サックス独特の音色用語を紹介しましょう。
「サックス系音質用語」は日本語ばかりではありません、むしろ英語の方がマニアックな表現が多いようです。リッチ(豊かな)、ファット(太い)、メロー(哀愁を帯びた)、クリア(透き通った)、スモーキー(細かい粒状感のある)、エッジー(輪郭の尖った)、ダーク(明るい)、ブライト(明るい)、ウォーム(暖かい)、など等、日本語でも使用される表現ですね。もっとカッコを付けた表現なら、ハート・ウォーミング(心の温まる)、ソフィスティケイテッド(都会的に洗練された)なんてのもありますね。英語ではあまり聞かない、「遠鳴りする」などと言う表現も、英語では「Distance Reachability」などと言うようです。基本的に日本語の音質用語も、これら英語の表現から派生しています。しかしこれらは皆、「褒め言葉」でしかありません。要は楽器やマウスピースのメーカーや販売店が、「これはこんなに良い音を出す可能性を持っているんだよ」という宣伝文句に使用する言葉ばかりです。もし、サックスプレーヤー同士、またミュージシャン同士で真摯に音質について議論するなら、「ネガティブな音質の表現」もボキャブラリーに持っておくべきでしょう。
ネガティブな音質表現はそんなにポピュラーではありません。何故ならば楽器やマウスピースの広告にも、試奏リポートにもほとんど出てこないからです。しかし、もし相手に対して、「ここに気が付いて、もっと素晴らしい演奏をして欲しい。」、と真摯に思っているなら、ネガティブ表現も重要でしょう。
ネガティブ語の決定打はプア(貧弱な、痩せた)でしょう。後ろから前に出てこないサウンドの表現にぴったりです。他にはラウド(うるさい)、ピーキー(一部だけ突き出す)、ドロップ(出てすぐ落ちてしまう)、ダーティ(汚い)、ノイジー(雑音)、アンステーブル(不安定な)、アンコントロールド(制御されていない)、アンクリア(聞き取り難い)、の様なものもあります。先ほどの「遠鳴り」に対しては「そば鳴り」ですね。
期せずして英語表現選考になってしまいましたが、英単語を使う必要はないと思います。(でも、多いですよね。業界のカタカナ英語)楽しい「音質談義」でお互いを切磋琢磨してください。
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