サックスという楽器の特徴のひとつに、音域によって多種多様な「種類」があるということがあります。xxサックスと最後に「サックス」という言葉は付きますが、本質的には全く違う楽器と言って良いかもしれません。でも、サックスという楽器の構造として同じなので、サックス吹きならほとんどその全部を吹くことが出来てしまう訳です。
一般的にはソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスが最も一般的なラインナップですが、高い音域にソプラニーノ、ソプリロ。低音域ではバスサックス、コントラバスサックスなどがあります。また目的によってCメロディサックス、サクセロ、アウロクロームなんて変わったサックスもあります。同じサックスであっても異なるキャラクター。今日は4大サックスの長所と使われ方についてお話ししましょう。
まずはバリトンサックスです。アルトサックスの1オクターブ下の音域の低音用サックスです。ビッグバンドでは、あるときはサックス隊のフレーズ、あるときはトロンボーンのフレーズ、またあるときは美味しい「目立ちまくり」フレーズを与えられます。リズム楽器的な表現も得意で、スラップタンギングというパーカッシブに音を出すタンギングで、バンドのリズムを支えることも得意です。しかし、重いです。デカいです。持ち運びにはかなり体力が必要です。
テナーサックスは「人間の声に近い音域とサウンド」と言われます。昔は演歌のインストバージョンといえばテナーサックス。「むせび泣く魅惑のムードテナー」なんてレコードが流行しました。人の声に近いゆえに色々なサウンドを出すことが出来、吹く奏者によってサウンドは100人100様です。野太い音でずっしりとした迫力の歌い方や、哀愁を帯びたかすれた音で囁くようなサウンドもあります。
という訳で、テナーサックスはどんな目的の音にも対応できる便利なサックスです。が、楽器の可能性に対し、必ずしも奏者の技術や知識が対応できるわけではありません。テナーサックス奏者は、常にサウンドで悩んでいる方が多いようです。王道のアルトサックスを飛ばしてソプラノサックスの長所を考えましょう。空気を切り裂くような高音域のサウンドは、目立つこと間違いなしです。サックスのことを「笛」と呼ぶ人がいますが、ソプラノサックスはまさに「笛」の音域です。まろやかな高音域は聞く人の心を和ませます。しかし奏者には音程をキープするのが難しく、かなり演奏には技術を要する楽器です。
さてアルトサックスです。サックスと言えばアルトサックス。初心者が入門用に選ぶことが最も多い、サックスの中のサックスです。演奏の難易度も意外と低く、だれが吹いてもそれなりのサウンドを出すことが出来ます。大きさも手頃なので取り回しにも難はありません。サックスの王道ゆえに「あるべきサウンド」も求められます。澄み切ったアルトのメロディをトップにしたサックスセクションのハーモニーは、とても美しい音楽表現です。アルト吹きは常に細かいサウンドの変化や音楽の表現方法に気を配る必要があります。かなり繊細な奏者が多いと感じます。ま、「激しく乱暴に演奏するアルト」もアリだとは思いますが…。
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