サックス奏者人口分布は、アルトが5、テナーが3、バリトンとソプラノが各1、って感じでしょうか。あ、もちろん公表値でも何でもないです。ただの「感覚」ってやつです。
でも、皆さんの印象もこんな感じですよね。という訳で、ソプラノサックスやバリトンサックスのことって、その奏者以外、意外と知らないことが多いんですよね。今日はソプラノサックスの知られざる雑学を紹介しましょう。
最近のソプラノサックスは、設計手法や製造技術が向上し、比較的安定した音程の楽器が多いようですが、ちょっと前までは、「ソプラノの音程は奏者の責任」と言われるほど音程の取り難い楽器でした。サックスは笛です。笛の構造上、音域が高いほど、楽器で正確な音程を出すことが難しくなります。音の周波数の波長が高音域では短くなるため、ちょっとしたトーンホールの距離や状態で、半音や一音くらい簡単に変化してしまうのです。ソプラノサックスの高音域では、口の締め具合でもの凄く音程が変化します。
そのため、「ソプラノは耳で吹け」なんてことも良く言われます。しっかりと自分で出した音を聞いて、高さ低さをコントロールして正しい音程でフレーズを吹く必要がある、ということです。同じB♭調のサックスですので、テナーサックス奏者がソプラノに持ち替えることが良くありますが、マウスピースの大きさがぐんと小さくなることと、アンブシャの強弱で音程が不安定になることで、決して単純に「持ち替えは簡単」とは言えません。
ソプラノサックスでは左手小指のキーアクションが二つ存在します。左手小指を「押して」操作するタイプと、「引いて」操作するタイプがあります。「押す」タイプはヴィンテージサックスではアルトでもテナーでも普通だったのですが、セルマーのマークVIあたりから、アルトとテナーは、現代の楽器と同じ「引く左手小指キー」となっています。
しかしセルマーマークVIのソプラノは「押す左手小指キー」です。また現代のソプラノでもいくつかの機種は未だ「押す左手小指キー」が生きています。これは、トーンホールの配置に関係しており、いわゆる「インライン・トーンホール」のソプラノサックスの場合に、「押す左手小指キー」となります。現代の多くのサックスは操作性を向上させるため、トーンホールの位置を管体左右に振り分けた、「オフセット・トーンホール」になっており、この場合は「引く左手小指キー」のメカニズムが実現できます。今では珍しいインライン・トーンホールは、低音域から高音域まで、滑らかに音色がつながると言われています。
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