気候が暑くなってくると、サックスの熱対策も考えねばなりません。いつもお話ししているように、サックスはとてもデリケートな楽器です。暑さ寒さにも結構弱いのです。暑い時期のサックスの熱対策について考えてみましょう。
サックスの部品を接合しているハンダが解けるような数百度の熱は別にして、熱や日差しにちょっと気を配るだけで、調整が狂ったり、故障するような災難を避けることが出来る場合があります。
まずは「真夏の直射日光」。こいつは絶対避けましょう。楽器の金属は蓄熱効果があるので、ほんの10分ほど真夏の日なたに楽器を置いておいただけで、触れないぐらいに楽器が熱くなってしまいます。ある友人は、不用意にサックスを真夏の日なたに放置しておき、いざ持ち帰ろうと楽器を持ち上げたら、触るに堪えられない熱さになっており、「熱っ!」とその手を放してしまいました。はい、サックスはいやな音を立てて下に落下しました。このようなサックスに「触れない」と言う問題に加えて、シャフトや各部品の「熱膨張」も考慮しなければなりません。運が悪ければ音が出ないほどの故障につながります。日なたと同じ理由で、真夏の車のトランクの中も高温になります。トランクにサックスを入れたままで、長時間駐車場に車を放置するのも注意してください。故障も怖いですが、この場合は盗難も怖いですしね。
「高温」は誰でも気が付きそうな初歩的な注意事項ですが、ちょっとマニアックな上級注意事項に「温度差」があります。理由は簡単です。金属は温めると伸び、冷やすと縮まります。急激な温度変化でサックスの各部品が伸びたり縮んだりを繰り返したら…ま、故障しますよね。どんな状況でこの「急激な温度変化」が出てくるのでしょう。例えば野外でのライブ。猛暑の野外で演奏し、ビルの中の楽屋部屋に引き上げてきたら、そこはキンキンに冷房されて、寒いくらい。楽器が悲鳴を上げるでしょう。逆のケースもありますが、冷えた楽屋でチューニングして暑い外に出てきたら、まったくピッチが合いませんので、そこにも注意です。これらの「急激な温度変化」への対策で頼りになるのが「ケース」です。楽器ケースの「クッション」は衝撃から楽器を守るのと同時に、温度変化に対抗する効果も高いです。ウレタンやスポンジ等のクッション材は断熱効果にも優れているので、サックスが必要以上に熱くなることや、急激な温度変化からも守ってくれるのです。灼熱の野外のライブにはサックスをむき出しで持って出るのではなく、ケースに入れてステージ袖に持っていくだけで、大切なサックスを多くのトラブルから守ることが出来ます。箱型ケースやパックケースでなくとも、ソフトケースでも「熱」と言う点ではかなり効果があります。
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