今回は管楽器に付き物の「ツバ」の話しです。でも多くの奏者の方は、あの「ツバ」が本当は唾液ではないことをご存知ですよね。吹き込んだ息の中の水分が、楽器の管体の金属の「冷たさ」によって結露し、水分となって流れるほどになるものです。
唇をぶるぶるふるわせて音を出す、トランペットやトロンボーン等の金管楽器の場合は、多少は「まじ唾液」の成分は多いかもしれませんが、サックスの場合は楽器に溜まる水のほとんどは息の中の水分です。でも、知らない人が見たら、やはり「ツバ」と思われてもしょうがないとは思います。ちなみに、ビッグバンド用のスタジオによく置いてある、金管奏者が唾抜きから出た水分を溜める皿ですが、ジャズ業界では「バーツ皿(ばぁつざら)」と呼ぶそうです。「ツバ」の逆さ言葉ですね。
さてサックスの「水分の道」を分析してみましょう。楽器に吹き込んだ息には、肺や気管で吸収された水分が多量に含まれています。
息から体外に排出される水分は、成人で1日に約300ミリリットル(コップ約1杯半)だそうです。冬に息が白くなるのは、低い外気温でこの水分が急激に冷やされ、目に見える「水」になるためです。奏者が人間である限り、サックス内の水は避けることが出来ません。
サックスという楽器内部で、息が最初に冷やされるのはネックです。演奏中はネックの内部は結露した水分で万遍なく「びしょびしょ」になります。そして奏者のサックスを構える角度によって、水分がまとめられ流れていきます。だいたい、ネックソケットのあたりから「細い水の流れ」になります。その水の道筋にトーンホールがあると、そのトーンホールのパッドは当然「びしょびしょ」になります。パッドを開閉して外に水滴が飛び散る、なんて場合はそのトーンホールが「水の道」に当たっています。サックスの構造上、左手の人差し指、中指で操作するキーがこれに当たる確率が高いです。「なんか指が濡れる」なんてときは、サックスの演奏角度を少し変えるだけで状況が変わる場合もあります。
しかし息の水分はネックですべて結露する訳ではありません。本体の主管の上から20cmほどは「結露注意エリア」です。パッドに直接結露してしまう場合もありますので、対応はそれぞれです。しかしパッドペーパーで水分を取ってやる必要が出るのは、サックスの上部のパッドだけです。サックスのベルの底に溜まった水を出すときは、ベルにハンカチやタオルを当てがってサックスを傾けましょう。むやみに床にこぼすのはお行儀が悪いので止めましょう。
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