遠い昔の記憶に、中学校のブラスバンドの備品楽器のなかで、トランペットやトロンボーン、ユーフォニウムやチューバ等の金管楽器は「凹みだらけのベコベコ状態」だったのに、サックスは妙にサビも無く、表面もきれいだったような気がします。かたや近年、バンド仲間の中で、一番楽器の修理屋さんにお世話になっているのはサックス奏者のような気がします。はてさて、サックスという楽器はどのくらい丈夫なのでしょうか?
「凹み」の部分を考えると、サックスは丈夫な楽器です。同じ条件で何かをぶつけたら、一番凹み難いのはサックスでしょう。サックスという楽器は管体素材の振動そのものは、サウンドの成分の一部分でしかありません。それに比べて、トランペットやトロンボーンは、管体そのものが響いて音を出しますので、その分、管体の素材を響き易くするため薄い金属で出来ています。そう、サックスが凹みに強いのは、金属が厚いからです。しかも管体の素材が広く露出しているのは、ベルや主管の左部分だけです。他の部分には、穴やら棒やら、カバーやらと、色んなものが管体素材に着けられています。凹みを見付けられる、凹みになる面積自体が狭いのです。凹みに強い、また凹みのサウンドに与える影響が少ない、とは言っても、口(マウスピース側)に近くなるほどその影響は大きくなります。あまり楽観的にはならないでください。
楽器としての安定度を考えると、サックスは多分…最弱でしょう。なにせ動作する機構部分が多すぎます。またレバーの連動や、それによる作動方向の変換の構造も少なくありません。歴史のあるクラリネットやオーボエも、アームやレバーなどの機構部分は決して少なくないのですが、その歴史と管体が木製という特性により、メカニズムの安定度がサックスより上と言えるようです。現代ファゴットに至っては、「やめてよ!」というくらいキーのメカニズムが複雑ですが、奏者は「意外と丈夫だよ!」、と言っているようです。金属と木材の特性を較べると、金属に立っている金属のポスト(シャフトの台となる棒)は曲がった時にそのままになり易いですが、木材に立てられたポストは木材の硬さと弾力で元の状態に戻り易いのです。木材の弾力によって振動にも強いようです。
表面処理に関しては、メーカーやモデルによってまちまちです。ラッカー仕上げでも剥がれ難いものもありますし、メッキ仕上げのものは長く輝きを保ってくれるものもあります。(メッキだから剥がれない、という訳ではありません。)このように、サックスは意外と「ヤワ(柔らかい、弱いの意)」なので、大事に扱ってあげてください。そして、「変だと感じたら迷わずリペアマンに相談」、がサックスと長く付き合う秘訣だと思います。
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