多くの音楽の話題では、クラッシックとジャズをまったく正反対のもの、まるで北極と南極のように「両端」として較べられます。確かに音楽のジャンルとして、目指しているものは全く違うのかもしれません。
クラッシックのサックス奏者がジャズに興味を持つように、またジャズのサックス奏者がクラッシックに興味を持つように、両者の違いと共通点を考えてみます。
ほとんどの楽器にはそれぞれクラシック系のエチュード(練習曲)があります。トランペットの「アーバン」、フルート用の「ベーム」や「ケーラー」、サックス用では「ラクール」や「クローゼ」、「ミュール」等が有名です。でもジャズサックス奏者の方々は、この「ラクール」や「クローゼ」、「ミュール巨匠のありがたいエチュード」を見たことも無い方が多いようです。
古くはオリバーネルソンによる「パターン・フォー・インプロヴィゼーション」(昔のタイトルは、ずばり、「パターン・フォー・ジャズ」でした)とか、バークリー音楽院系のトレーニングメソッド、また現代のプレーヤーが書いたエチュード本等、コード進行やスケールチェンジ、ジャズフレーズパターン集等が、ジャズサックス奏者の「バイブル」となっているようです。これらの楽譜本の「顔」は、確かにそれぞれ「クラッシックっぽい」し、「ジャズ・ポピュラーっぽい」です。
しかし勘違いは禁物です。前者のクラッシック系エチュードは楽器のコントロールの上達に重きが置かれ、後者のジャズ系エチュードは、フレーズやコード進行習熟、アドリブのフレーズ貯金等に注目しています。
はい、目的が違うのです。ジャズサックス奏者の私の友人は、バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番 〜プレリュードとサラバンド〜」を演奏や練習前のウォーミングアップ用に吹いています。跳躍だらけのフレーズが、唇を整えるのに好都合だと言っています。クラッシック系サックス奏者の方々もジャズ系サックス奏者の方々も、エチュードの表紙にまどわされず、是非「別ジャンルのエチュード」にも挑戦してみてください。音楽の幅が広がること間違いなしです。
使うリードの種類もクラッシック系とジャズ系では違いますね。一般的には、クラッシックサックス用には、リードの表皮を水平に剥いてある「ファイルド(フレンチカット)」、ジャズ・ポピュラー用にはリードの背を切ったままの「アンファイルド(アメリカンカット)」を使うようです。「フレンチカット」は滑らかな音、コントロールのし易さ、また「アメリカンカット」は音に力強さ、太さがあると言われています。
ちょっと前までは、ジャズサックス奏者がフレンチカットのリードを使っていることはほとんどありませんでした。
逆もそうです。しかし近年では、多くのサックスプレーヤー達がカットにこだわらず、純粋に「望む機能」を追いかけてリードを選んでいます。かなりのモデルのリードが「フレンチ」と「アメリカン」の両タイプを揃えているので、微妙な違いを探すことが出来ることも、その原因のひとつでしょう。サックスという楽器は単なる音を出す機械です。それを使ってどんな音楽を作り出すかは、奏者次第ということですね。エンジョイ・サックスライフ!
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