クラッシックの専門家の中には、サックスの音を「大嫌いだ」と公言してはばからない人がたまにいらっしゃるそうです。またブラスバンドの指導者で、「ジャズサックスの音質はノイズだね!」と言い切る方々も少なくありません。事実、トランペットやトロンボーン等の金管楽器奏者の「クラッシックとジャズの両刀使い」はかなりの数がいますが、サックスの場合は「どちらか片方」が大多数のようです。本当にジャズサックスの音質は、クラッシック系の方々に、「雑音だ!」と言われるほど汚い音なのでしょうか?
クラッシックの「サックス四重奏」等のサックスアンサンブルでは、ソプラノからバリトンまで、驚くほどの音質の均一性が実現されています。一流のサックスアンサンブルでは、目をつぶっていたら、どのパートのサックスの音かを聞き分けるのは至難の業です。「この楽器では出ない音域」、くらいが聞き分ける唯一の手段です。それほどクラッシックのサックスのサウンドは「均一性」や「滑らかさ」が求められます。真偽のほどは定かではありませんが、アンサンブルでは同じメーカーの、同モデル、同時期生産の楽器を使う事で、「音質の調和」を追求する、とも聞いています。楽器の表面処理が曇ってきたら、「音質が変わる」といって、そのサックスはお払い箱にするとも聞いています。確かに、ジャズサックスで言う「ヴィンテージ」を使っているプレーヤーは、クラッシック系ではほぼ見つける事は出来ません。
「サックスを持っているから」といって、ジャズのサックス奏者がブラスバンドの練習に参加すると、必ず言われるのが、「そんな汚い、大きな音を出さないでくれ!」、だそうです。まあ、確かにデビッド・サンボーンもジョン・コルトレーンもブラスバンドには向いていないでしょう。セッティングも、奏法も、クラッシック系とジャズ系のサックスでは天と地の差が有ります。でも最近のプレーヤーの中には、しっかりとこの差を吹き分けられる方も少なくないようです。求められるサウンドを、自由自在に鳴らせるなんて、プロ中のプロですね。楽器奏者として羨ましい限りです。
本題に戻りましょう。要は求められるサウンド、出したいサウンドが、音楽のジャンルで違う、ということにつきます。どちらのサウンドが正しくて、どちらかが悪いという訳ではありません。しかしひとつだけ注意して欲しい事が有ります。クラッシック系のサックス奏者の方々は、しっかりと、「出そうと思う音を追いかけている」のに対して、ジャズ系のサックス奏者は、「出てしまっている音で演奏している」、という場合が少なくありません。音楽は「表現」です。自分のサックスのサウンドも、あなたの個性です。自分のサックスの音が、本当に自分の求めるサウンド、音質であるかは、奏者のあなたの思い入れ次第です。
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