サックスは楽器の維持にとてもお金がかかる管楽器です。これが無いと音が出ない「リード」は、消耗品のくせに結構な値段です。
サックスを二、三十年吹いていれば、サックスの価格をリード代総額が超える場合もあるでしょう。また定期的に調整に出さないと、すぐにサックスは機嫌を悪くして、鳴らなくなってしまいます。トランペット等の金管楽器は、掃除や油差しを普通にやっていれば、落としでもしない限りはリペアマンのお世話になることは稀なことです。
そういえば、「サックスの調整」つて何をしているのかご存知ですか?どうしてサックスって楽器は、こんな頻繁に「調整」しなくてはいけないのでしょうか。その辺を攻めちゃいましょう。
サックスは「キー」という「レバー連動構造」の化け物です。棒の片側を押すと、軸を通して反対側か動き、その動きが他の棒を動かします。そんなかんなの動きが組み合わされて、人間の9本の指の動きで、幾つもの「フタ」が笛の穴を塞いだり、開けたりします。サックスという楽器は、「指が届かない場所の笛の穴を、棒を伸ばして指の替わりに塞がせる」、という発想から出来ている楽器です。この連動機械構造はうまく動いていれば素晴らしい役割をしてくれますが、ちょっとバランスが崩れてくると、機構連携が正しく働かなくなり、楽器としての機能が損なわれてしまいます。サックスは吹いている間中、ガチャガチヤと色々な部分が動きまくっています。それを繰り返していれば、やはり楽器も「疲れてくる」のです。
サックスの調整は大きく分けると3種類の調整からなっています。パッドの漏れの調整、バネの強さの調整、そして音程の調整です。サックスはその構造上、パッドの中心を垂直に押してトーンホールを塞ぐことはできません。炊飯器のフタのように(?)、片側ヒンジでフタをパタパタと開閉します。真ん中を押していないので、だんだん塞ぎ方がずれて来ます。フタがずれるとトーンホールから息が漏れ、ちゃんと音が出なくなります。パッドの角度やカップの歪み具合を調整して、全てのパッドがきれいにトーンホールを塞ぐようにするのが最初の調整です。もちろん「全パッドを」です。バネの強さはプレーヤーの快適な操作の為の調整です。くねくねと曲がったり真っ直ぐになったりを何千回も繰り返したニードル・スプリング(針バネ)は、その強さがバラバラになってきます。人差し指は重くて、中指が軽いサックスなんて、操作し難い事は歴然です。サックスのバネをしごいたり、交換したりして、快適で軽やかな操作が出来るように調整するのが、サックスのバネの調整です。
一番手強いのが「音程の調整」です。サックスのパッドは、開いて止まっているときにもサックスの音程に関与しています。ざっくりと感覚的に言ってしまうと、「解放時にパッドがトーンホールに近いほど、音程が高くなる」という現象が有ります。また、「ある距離以上トーンホールからパッドが離れなければ、トーンホールを完全に「開けた」状態にはならない」という機構上の制約も有ります。リペアマンはパッドの開き具合を調整して、サックスの全音域において正しい音程の音が出るようにします。
——————————————————————————————–
——————————————————————————————–