サックス奏者にとって、低音域の音量と音色のコントロールは、サックスの上級者になるためには避けられない「ハードル」のひとつです。低音域のコントロールに関しては、「低音は出せません!」と、ドから下の音を出すのを諦めるサックス奏者も珍しくないくらいです。今回はこの「低音域問題」を解決するためのいくつかのヒントをお話ししましょう。
まず基本的な条件として、やや深めにマウスピースを咥え、思いきり息を吹き込めば、低音域の音は決して出ないわけではありません。しかし、「ぶぉー!」という音楽とは程遠い音になってしまうのがオチでしょう。サックスは構造的に、「低音域を自在にコントロールすること」、が難しい楽器なのです。低音域のコントロールには、リードの固さ、マウスピースのティップオープニング(開き具合)、息の角度、タンギングの方法等が関与します。あえて誤解を恐れずに簡単にまとめてしまうと、柔らかいリードで、開きの狭いマウスピース、息は真っ直ぐ沢山、タンギングははっきり、と吹けば、「ぶぉー!」という音としての低音は簡単に出すことが出来ます。「それじゃあ、意味ないじゃん!」と言われればその通りです。上記の条件を頭に入れたうえで、自分なりのコントロールを習得する事が必要です。
低音域のコントロールの方法は、以下の順で練習することを進めます。
最初は、「出てしまった音を吹き続けながら変化させる」です。大きな音量を小さく、また低い音程を上げる、ちらばっている感じの音色なら音色をまとめる、そんな「後攻め」の方法を練習します。
これによって、「低音域の口の形や力の入れ具合」が分かってきます。次は「低音の出し方」の練習です。色々なタンギング、色々な息の角度、色々な音量で、とにかく音の出だしの感覚を練習します。
そしてこれらのステップで、なんとなく希望の低音域の音の立ち上がりが得られるようになったら、「出だしと連続音の組み合わせの練習」に移ります。
実は、サックスの低音域を、「軽快な立ち上がりで、小さくて柔らかな音を出す」のは超上級のテクニックです。最低音シ♭の音を、サブトーンで小さな音量で出せたら、もう怖いもの無しでしょう。サックスの上級者でも、低音域は「ボ、ヒューン」という、いわゆる「二段吹き」が実は少なくありません。ビッグバンドやポップスジャンルでのバリトンサックスのように、パーカッシブな音が求められる場合はこの傾向が顕著です。ですから、「二段吹き」は決して否定される吹き方では無いと私は思います。でも、それが自分の求めるサウンドであるか、そうで無いなら、それを克服する練習は必要だと思います。がんばってください。
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