エージングという言葉をご存知ですか?中年女性向けの化粧品はエージング化粧品。ウィスキーやワインの熟成もエージングと呼びます。新品のスピーカーやイヤホンの音慣らしもエージングと言います。最近では牛肉を熟成する意味のエージングも有名です。
要するに「新品をある程度の時間を使って、より良いものに変化させていく」というのがエージング。年齢:Ageの動詞形です。
管楽器にはエージングに似た概念が有ります。そう、「抜ける」です。管楽器はある程度吹き続けることで、良く鳴るようになる。これを「抜けた楽器」と呼びます。
「さすが、ヴィンテージは良く抜けた音がする。」とか「このモデルは新品でも抜けが良い。」とか、皆さんも口にした事が有ると思います。
吹奏感が良い、響きが豊か、音がまろやか、等など、そんな感覚的な楽器の評価が「抜ける」に集約されていますが、技術が進歩した現在、「抜け」を「エージング」として科学的に考えるケースが多くなっています。
そんな言葉、「エージング」を2回に渡って説明します。使う言葉は難しげですが、たいしたことは言ってないので楽しんで読んで頂ければと思います。
サックスのエージングは、大きく分けると、管体材質のエージングと、メカニズム、つまり機械的機構のエージングの二つです。
材質のエージングとは、サックスの管体の金属素材の経年変化、および演奏を続けることによる、振動が生みだす金属特性変化のことです。これは管楽器全般に共通します。簡単な言葉で置き換えると、「長い期間、音を出し続けていると、徐々に楽器の金属の特性が変化して来て、より音が出易くなって来る。」ということです。
楽器に「振動」というストレスを与え続けることで、素材が振動し易くなり、音に変化が現れます。
サックスではあまりありませんが、大音量で演奏することの多いトランペットなどでは、「楽器がつぶれた」ということもあるようです。楽器の素材エージングの最終形では、楽器が振動し難くなるほど金属が疲労してしまうこともある、ということでしょう。
いくら50年前のヴィンテージサックスでも、倉庫の奥でまったく使用されずに眠っていた「新古品」の場合は、このエージングがなされておらず、「鳴りが今一つなヴィンテージサックス」なんてものも存在します。
「これから抜く楽しみが有る。」、と言って喜ぶマニアも少なくありませんが、その様なサックスは音を聞いてもヴィンテージ感はほとんど感じられません。
今日の話しで強調したい事はただ一つ。「楽器は鳴らしてやって育つ」です。自分のサックスを良い音にするには、マウスピースやリード、アクセサリーを悩むより、毎日練習してあげることが重要です。
ちなみに最近では、大きなスピーカーをサックスに密着させ、長時間音楽を流し続けて、無理やりサックスを振動させる、という「今らしい」エージングの方法も試されて来ているようです。
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