同じサックス吹きでも、アルト奏者はバリトンサックスやテナーサックスの多くは知りません。自分の吹いているサックス以外のことは意外と知らないものです。何かの際の役に立つかも、程度のノリで、各種サックスのそれぞれの常識や「あるあるネタ」を紹介しましょう。今回はテナー編です。
妙に中途半端な大きさのテナーサックスは、かなり譜面が見辛いサックスです。ネックがマウスピース側から一旦上に曲がっているため、そのネックの盛り上がり部分が視線の邪魔になります。バリトンも視線を邪魔しそうですが、ネックの角度と渦巻の巻き方で、そんなに視線を邪魔しません。なもんでテナーサックス吹きは、ちょっと横目で楽譜を見る癖がついています。またテナーサックス奏者のほとんどは、立奏時、座奏時ともに、右足の太ももの右側に楽器を充てて演奏します。そのため演奏姿勢が、妙に左に傾くのがテナーサックス吹きの標準演奏姿勢です。まれに体の中心にテナーサックスを構えた立奏姿勢で吹くプレーヤーも少なからず居ますが、ある程度両足を開いた、かなり「男らしい」姿勢になります。またほとんどのテナーサックスは、右足の太ももに擦れる管体左側部分から、ラッカーが擦り減り、細かい傷が付くようです。
ネックのトラブルが多いのもテナーサックスです。細くて長いテナーサックスのネックは、不用意に力を加えると簡単に曲がってしまいます。マウスピースの抜き差しをしただけで、ネックが微妙に曲がります。テナー吹きは必ずネックに手を添え、しっかりと固定した状態でマウスピースを抜き差しします。テナーサックスの場合は、ネックのハンドリングには最新の注意を払う必要があるのです。ネックの交換が最もサウンドに対する影響が大きいのも、テナーサックスだと思います。
また、「手が濡れる」のもサックスの中でテナーが一番です。多かれ少なかれ、サックス奏者等の管楽器奏者は、息の水分が楽器の中で結露した水で、手や服を濡らしてしまいます。しかしテナーの場合はちょっと特別な事情があります。サックスを構えた姿勢と、管体内を流れる水、そしてトーンホールの位置が相互に関与して、「トーンホールから漏れ出す水が、左手を濡らす」確率が格段に高いのです。同じ理由でパッドが水分で劣化したり、トーンホールに張り付く確率も高いので、テナー吹きは演奏中も、神経質と思えるほど頻繁に、吸水ペーパーでパッドの水分を拭き取っているようです。
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