マウスピースの先端が欠けた、バイトプレート(前歯の当たる部分)が削れたので直したい等、マウスピースに関するトラブルの場合、サックスのリペアマンに相談しても、「すみません。専門外なんで」、と断られる場合があります。サックス等管楽器の修理・調整の技術と、サックスやクラリネット等のリード楽器のマウスピースの修理・調整は、まったく異なる技術です。管楽器全体の調整も修理も、「正解のある作業」であり、方法や手順にはバリエーションがありますが、結果的に目指す結果は見えています。そしてその発見方法や修理方法を、ちゃんと体系立てて教育してくれる学校も、また教育方法も確立しています。しかしマウスピースの修復、また調整に関しては、「正解の無い技術」、とその専門家達自身が言っているほど、感性的で未確立の技術の部分が多くあるのです。
マウスピースの形状の各部分は複雑に相互に関連しあい、最終的にそのマウスピースのサウンドや吹奏感の個性を作り出しています。例えばマウスピースの左右の壁、サイドレールと呼ばれるこの部分は、「シャープなエッジ、左右均一なレール幅と傷の無い表面」、がマウスピースを選ぶ際の「基本」とされていますが、例えば凄く良く鳴るヴィンテージ・マウスピースのサイドレールが、左右非対称であったりすることが少なくありません。これを「やっぱり左右対称が基本だから」と言って、削って直したりしたら、そのマウスピースは全く使い物にならなくなってしまうでしょう。また新品のマウスピースは、そのメーカーが自信を持って市場に流通させている「商品」です。基本的にメーカーとして「完成」したものを出荷しています。しかし、マウスピース調整を専門とする技術者にチューニングを依頼すると、そのマウスピースは別物のような鳴りをする、変身をとげるでしょう。それはマウスピース・チューナーである職人さんと、あなたの希望とが実現した、新しいマウスピースなのです。多分、調整する技術者が違う人であれば、違うチューニングを施すはずです。マウスピースの調整の技術は、それほど経験と勘、そしてマウスピースに対する哲学に支えられています。
このように「絶対的」な修理・調整が存在しないマウスピースという部品は、その性質上、「絶対正解な製品」も存在しないのかもしれません。しかし構造上、また仕上げ上の絶対値こそ無いかもしれませんが、プレーヤーである「あなた」が気に入ったマウスピースが、多分「あなたにとって最高のマウスピース」なのだと思います。
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