管楽器の演奏、また管楽器による音楽の学習には、どうにも見せたり、触らせたりすることが無理な部分が沢山あります。例えば演奏時の口の中の状態。ほっぺと口の周りだけの透明人間がいたら良いと思いますが、口の中はどうやっても見られません。それゆえ管楽器の習得にはとかく「感覚的な説明」が多くなります。「….というつもりで吹きましょう」、という解説がなんと多いことでしょう。ちょっとこれに関して大事なことを聞いてください。
「感覚的な説明」の最右翼が「腹式呼吸」です。はっきり言ってお腹に息は入りません。人間の体の中で、息が入るのは「肺」だけです。管楽器演奏者だけが、息をお腹に貯めることが出来るなんてことはありません。腹式呼吸は、多くの人間の通常呼吸である、肋骨の開閉で肺の中の空気を出し入れする「胸式呼吸」に対し、息の出し入れの速度と、コントロール性を向上させるために、腹筋と背筋を使って横隔膜を上下させ、管楽器の演奏に適した息の量と質を確保する、という呼吸法です。要は「お腹を意識して使う呼吸」が腹式呼吸と言って良いでしょう。蛇足ですが、腹式呼吸の主役は、腰の後ろの「背筋」です。腹筋だけでは充分な腹式呼吸はできません。
もうひとつの「有名な例え」は、「タンギングはトゥトゥトゥ」です。舌の動きのイメージを表したものですが、この表現はあくまで、「…な感じ」という比喩であり、「トゥ」という発音が絶対的な正解ではありません。ひとによっては「ルルルル」や「ドゥドゥドゥドゥ」なんて比喩もあります。タンギングの場合は結果オンリーですので、比喩表現を頼りに、自分なりの奏法へ辿り着く必要があります。口の中の話では、「暖かい息で吹く」という解説がサックス教本や先生の指導で使われます。体内から出る息の温度は体温と同じです。プレーヤーが息の温度を変える事など出来ません。これは、寒い時に手のひらを温めるために息を吹きかける仕草、「あぁ、寒い。ハァ~!」って感じの息のスピードと喉の開き具合をイメージしてね、という比喩です。間違っても口の中に温度計など入れないでください。
ちょっと高度になりますが、「休みの“うん”」にも突っ込みを入れます。皆さんは小学校の時代から、「タン、タン、タン、うん、タン、タン、うん、タン」というように、休符を「うん」で感じて演奏しよう、と習いましたよね。ジャズを演奏する場合の例えとしても、「んダ、んダ、んダ、んダ」とかの言葉で「裏ビート(拍の裏を強調する表現)」を説明したりすることが多くあります。比較的ゆっくりしたスイングの曲であれば、この比喩は演奏の表現に役立つ場合はあります。しかしある程度速い曲の場合、「うん」なんて頭で考えたら、次の音が遅れるのは確実です。休符の「うん」や「ん」は瞬時に「感じるだけ」で、言葉としてイメージするのはお勧めできません。
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