サックスのトーンホールを押さえて塞ぎ、サックスの音階をコントロールするためのパッドは、サックスの部品の中でも特に重要で、かつ消耗する部分です。一年に1回から数回のバランス調整のときには、高音の場所のパッドの2、3枚は交換するのが普通です。ネックに近い部分のパッドほど濡れやすく、傷み易いからです。またオーバーホールという「全面リフレッシュ」の調整では、管体を分解し、すべてのパッドを交換し、すべてのキーの調整をやり直します。ま、これでほぼ新品に蘇りますが、費用が10万円を超える場合もザラなので、そうそうできない調整です。このようにパッドを交換する、またパッドの状態により調整し直す、というのに慣れっこになっているサックス奏者ではありますが、しげしげと自分のサックスのパッドの状態を確認したことはありますでしょうか。今日はパッドの見方と診断法です。
パッドの観察には、管体の内側に挿入して、中からパッドを照らす「リークライト」というものが必要です。しかしリークライトはパッドの閉まり具合をチェックする道具ですので、管体の内側からパッドを照らすだけなら、ひもを付けた小さなペンライトや、模型用の豆電球で十分です。もしくは横から懐中電灯で照らす程度でも、十分パッドの観察は可能です。リペアマンはキーを外してパッドをチェックしますが、我々サックス奏者はそこまでせずに、隙間から除く程度でOKだと思います。
パッドの診断要素は、「弾力」、「凹み」、「傷」、「汚れ」の4要素です。パッドはなめし革か類似の合成皮革で出来ており、その弾力によってトーンホールを塞ぎます。カチカチ、ガビガビで見るからに弾力を失っているようであれば、もう正常に機能していないでしょう。ただし長年の使用で、「ぴったり塞がる状態で固まっている」パッドも稀ではありません。吹いていて問題がなければ妙に触らないほうが良いかもしれません。この「塞がる状態で固まる」理由が「凹み」です。パッドの新品を取り付けた後、パッドはカップごとトーンホールに押し付けて、トーンホールの円の形に凹みが付けられます。この凹みがトーンホールの縁にぴったりと合っていれば、空気は漏れにくい状態です。パッドの傷は実はこのトーンホールの跡に傷が届いていなければ、パッドの機能には影響はありません。ただし傷から不要な水分がパッド内部に浸み込み、早く傷んでしまいます。汚れも傷と同様です。凹みに溜まった汚れはトーンホールエッジとパッドの密着を邪魔します。濡らした綿棒などで拭いて取れる場合もありますので、チャレンジする価値はあると思います。
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