サックスの右手、左手の小指で押さえるキーには、ローラーが着いています。右手小指はドとミ♭の間、左手小指はシとド♯、シ及びド♯とシ♭の間にローラーがあります。これらはもちろん音と音の間の操作をスムースにするためのものですが、これらのローラーが回らなくなってしまっているサックスを良く見ます。今日はこの、「ローラー」についてのうんちくをお話しします。
ローラーは二つの音のスイッチ(切り替え)をスムースにするために不可欠ですが、実はローラーが回ればすべてOKというものでもありません。ローラーには行きと帰り、下りと上りがあります。右手小指で言えば、ミ♭からドヘは「下り」、ドからミ♭へは「上り」です。重要なのはプレーヤーであるあなたが、「上り」と「下り」のどちらを重要に、またどんな指の感覚でおこないたいかを実現するのに必要となる調整です。この調整が二つのキーの「高さの差」です。サックスの小指で操作するキーは一般的に「テーブルキー」と呼ばれますが、このテーブルキーの各々の高さの差が、キーの操作性に大きく影響するのです。右手小指で、ドヘの下りを快適にするには、ドのキーの高さを少し下げるのが一般的です。つまり「落ち易く」する訳です。ただし小指を「落とす」より「寄り掛かる」ほうが素早い操作が出来る、というプレーヤーもいます。その場合はドのキーは少し上がり気味、かつ小指全体を受け止めるよう、やや傾斜をつけます。これで奏者の小指が心地良く動かせます。右手小指のテーブルキーは二つの関係なのでまだ調整はシンプルです。
左手小指のテーブルキーは四つのキーの高さ、傾斜、ローラーの回り具合等、複雑な調整が必要です。しかし望み通りに指にフィットするように調整されたテーブルキーは、びっくりするほど運指が楽になります。サックスのテーブルキーは「奏者に合わせて要調整」を前提に設計されており、新品出荷時には「一般的な標準状態」で出荷されていますので、自分のキー操作に違和感があれば、調整するのが当たり前の部分です。こんなところが調整可能だったことを、知らないサックス奏者の方が大多数だと思います。是非何かの機会に、この「テーブルキー」についてリペア技術者の方と相談してみてください。苦手だったフレーズが、得意のフレーズに大逆転するかもしれません。
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