サックスを吹いていると水がU字管の底に溜まります。これを「唾」と言うひとが少なくありませんが、唾液がこんなに溜まる訳はありません。確かにタンギングの際の唾液の飛翔がサックス内部に入り込むケースもありますが、この水の主たる成分は息の中の水分が結露して水になったものです。人間の吐く息にはかなりの水分が含まれています。湿り気を含んだ、体温と同じ36℃程の暖かい空気が、それよりも温度の低いサックスの管の中で冷やされ、その水分が水に結露します。それがサックスの中の水の正体です。
このサックス内部の水分は、避けることのできないものではありますが、不用意にほおって置くとサックスにダメージを与えます。管体内部を濡れたままにしておけば、当然錆が生じます。錆びないまでも水はホコリをまとめ、落ち難い汚れとなってこびり付くかもしれません。パッドに付いた水分はパッドの劣化を促進します。またホコリと混ざってトーンホールの密閉度を悪化させます。何にせよ、サックス吹きはこの「管の中の水分」とまじめに向き合わねばなりません。(そんな大袈裟な事かな?)
サックスの内部で一番「びしやびしや」になるのはネック内部、そして主管(2番管)の上のほうです。熱い息はネックで急速に冷やされて結露します。そしてサックス内部の管の前側を通って下へと落ちて行きます。これはストレートソプラノとバリトンを除くほとんどのサックスが「前傾姿勢」で吹かれるからです。この川の流れの途中には、一番の被害者である「パームFキーのトーンホール」があります。サックス正面(吹き手の反対側)で管体の一番上に付いたこのトーンホールのパッドは、数分サックスを吹いただけでびしょびしょになる場合があります。可哀想ですね。まめに吸水ペーパーを使って、このパッドが長い間びしょ濡れにならないように気をつけてあげると、パッドの持ちが抜群に伸びます。 次の水溜りは左手人差し指と中指で塞ぐトーンホールです。このあたりまで来ると、吹き方やその日の温度、最初の水の流れの道の付き方等で、水が来たり来なかったりします。ただ、かなり頻繁に使うキーなのとトーンホールが大きいので、一旦濡れ始めると、左手の指がびしょびしょになってしまいます。このあたりから飛び散った水分が、床を濡らすこともあります。
最近では、このサックス内部の水の流れをコントロールする設計がなされたサックスが市販されていますが、普通のサックスを持っている方々は、とにかく、「濡れたら拭く」で対応しましょう。
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