特殊なCメロディサックスを除き、サックスは皆、E♭かB♭の移調楽器です。管楽器は皆、概ね移調楽器ですので、管楽器用の楽譜はE♭やB♭の移調譜面です。とはいっても、やはり楽譜は原調のC譜が基本です。ピアノもベースもギターもC譜で演奏します。かの有名な「ジャズスタンダードハンドブック(青本)」もC譜の楽譜本です。最近では新しい「ジャズスタンダードバイブル(黒本)」が、B♭版、E♭版を出していますので、管楽器奏者はそっちへ流れているようです。しかし何にせよ、音楽の世間ではC譜が王道です。「この曲やりませんか?」、と楽譜を用意してくれているメンバーがセッションに居ても、普通はC譜を持ってきます。管楽器奏者でなければ、「B♭譜」や「E♭譜」の存在すら知らないプレーヤーも少なくありません。さて、苦労の多い(?)移調楽器、サックスを吹く我々は、どうすることでこの難局(大袈裟ですか?)を乗り越えれば良いのでしょう。
昔のサックスプレーヤー、特にプロのジャズプレーヤー達は、「楽譜のC読み」が必須の技術だったようです。要はC譜を移調キーで読んで、移調楽器で直接演奏する技術です。B♭のテナーやソプラノなら、C譜の「ド」の位置を楽器の「レ」に頭の中で置き換えます。かつ調号のシャープやフラットは「#ふたつ増」で考えます。E♭のアルトやバリトンなら、C譜の「ド」の位置を楽器の「ラ」に頭の中で置き換えます。かつ調号は「♭みっつ増」です。このような読み替えには2パターンあり、楽譜側に自分の楽器の運指を当てはめる場合と、楽器側の運指の名前にC読みを当てはめる場合があります。どちらにしろ、C譜しか無い状況で、合奏を楽しむには必須のテクニックです。そしてこの技術は単に、「C譜しかないときの非常用」ではなく、ジャズでアドリブを演奏する場合には別の意味でも役に立つのです。
いわゆる「12音平均律」が私たちの音楽ですが、これはオクターブを12に割った音列です。そして12有る調(長調のみ。正確にはもっとあります。)は、それぞれの音列を平行移動して得ることが出来ます。この「平行移動」が「C読み」との共通点です。詳しいことは略しますが、音列の平行移動はコード進行の解析や、どんなキーの曲でもアドリブを可能にするためには、とても重要な技術です。是非皆さん、「C読み」に挑戦してみてください。
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