「ヴィンテージサックス」。ジャズのサックス吹きなら、一度は「クラッ!」となってしまったことがある言葉でしょう。50年、60年前のボロボロのサックスが、びっくりするほどの価格で取引されています。先回に引き続き、ヴィンテージサックスの噂や豆知識をまとめてみます。噂と言っても、私自身が確認しています。「個人の意見だろ!」と言われてしまえばそれまでですが、少しでもヴィンテージサックスに興味がある方の参考になればと思います。あ、メーカーの設立年、モデルの年代等、WEBで調べれば分かるような事は面倒くさいので割愛します(汗。
さあ、今回は「ビッシャー」です。「Buescher」という名は創始者の名前ですが、日本語では、「ブッシャー」とか「ビューシャー」とか色々な発音で呼ばれています。最近のヴィンテージ市場では、「ビッシャー」という表記が一般的なようです。ビッシャーさんは実はコーンのサックス職人さんで、1894年にコーンから独立して自分の会社を立ち上げました。ビッシャー氏は非常に優秀なサックス製造技術を持っており、コーンで培った技術を自己のブランドで更に発展させました。「ビッシャーはコーン・サックスの完成形だ!」、というひともいるくらいです。コーンの野太いサウンドに、より細やかな繊細な表現力が加わっていると評価されているビッシャー・サックスは、デュークエリントン楽団のサックスセクションに採用された事でも有名です。モデルは古い順に、トゥルートーン、アリストクラット、そしてモデル400があります。この400以降のモデルもありますが、これらはマーチン社が製作しています。Buescher Top Hat & Cane 400 Modelはビッシャー社の独創的な特許が満載されたモデルです。なかでも「スナップ・オン・パッド」というシステムは、パッドをホックのように「パチン」とパッドカバーに取り付けるという独創的なアイデアです。それによってトーンホールの密閉度が上がり、響きが豊かになっているとのことです。しかし今のリペアマンには「泣かせる仕掛け」であることは間違いありません。