クラッシックのサックス四重奏の場合、サックスのメーカーやモデル、またマウスピースまで揃えるのが一般的です。この間聴きに行ったサックスアンサンブルのグループは、ストラップも同じ種類でそろえていました。これはひとえに、「サウンドを揃える」という基本的な、かつ音楽表現上重要な目的のための手段ですが、ジャズにもポップスにもその概念は少なからず存在します。今日は、「サウンドを揃える」ってことについてお話しましょう。
「ストラップを揃えるなんて意味無いじゃん」、と言われる方もいらっしゃるでしょうが、私はそうは思いません。サックスを吹く環境を同じにする事で、メンバーの手の動きや挙動の意味が理解し易くなり、気持ちの一体化を助け、ひいては演奏の一体感に通じると思います。またストラップによって吹き手側で聞こえる音は確実に変化しますので、その音質を共有する事も決して無意味ではないと思います。ジャズの世界での楽器の共通化は、かの有名なデュークエリントン楽団のサックスセクションが有名です。かつてのエリントン・バンドのサックスセクションは、ビンテージサックスの名品、「ビッシャー」のサックスを全員が使う事でサウンドの統一性を実現していました。またコンボジャズの世界でも、編成やメンバーに合わせて楽器を替えることも少なくありません。アルトデュオの形態で、二人のアルト奏者が同じアメリカンセルマー・マークVIを使い、シリアルも近い楽器を使っているため、どのフレーズをどちらの奏者が吹いているか分からないほどサウンドが似ているバンドを知っています。本人達にうかがったところ、楽器は各々が昔から使っているものだそうですが、ご本人達もあまりのサウンドの類似性に驚いているそうです。
逆にジャズの世界では一般的に「個性の調和」と称し、違うサウンドの奏者達が集まって創り上げる、それぞれの個性をミックスした、溶け込む事無く調和する事を重視するバンドサウンドも是とされています。ま、合奏で何を表現するか、どんなサウンドを創り上げたいかのコンセプトの相違であり、どれが正解というものではないでしょう。しかし、「サウンドの調和」は音楽作りにおいて配慮すべき重要な要素である事は事実だと思います。
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