昭和29年、初のテナーサックス製作以来、独自のコンセプトでサックスの製造に専念し、現在では「セルマー」、「ヤマハ」に並ぶ、「世界三大サックスブランド」のひとつとしての地位を築いている、日本の楽器メーカー、「ヤナギサワ」のエボナイト製サックスマウスピースです。
日本で唯一、かつ世界でも稀なサックス専門メーカーとしての独自のコンセプトと高度な技術が、このマウスピースにも注入されています。
セルマー、ヤマハ等、サックスメーカー製のマウスピースは、一般的に自社製のサックス本体に最適化した設計を基本としているため、マウスピース固有のサウンドキャラクターが薄く、「サックス本体のサウンドを忠実にサポートする」といった傾向があると言われていますが、このヤナギサワ製ラバーマウスピースは、その一般論を凌駕する品質と個性を持っており、そのサウンドと吹奏感は数多くのサックスプレーヤーに支持されています。
「ラバーマウスピース」というと、最近では非金属系の材質のマウスピース全般を指す場合が多くなっていますが、ラバーという呼称は「ハードラバー」から来ており、今でもサックスマウスピースの代表的材料である硫化ゴム=エボナイトから出来ているマウスピースが本来「ラバーマウスピース」と呼ばれます。
エボナイトは人類最初の合成樹脂と言われるほどの歴史を持ち、それの目指すところである「エボニー(黒檀)」に匹敵する硬さと、音響性能を有しています。非金属系マウスピースの材料には、その他にも「プラスチック系」、「アクリル系」、「レジン系」、「天然木材系」など幅広いものが採用されていますが、やはりその音響的特性とサックス本体の構造との馴染みの良さなどから、サックスのマウスピースの材質の王道は「ハードラバー」であり、クラッシック・ポピュラー等、音楽のジャンルを超えて信頼されているマウスピースの材料です。
ヤナギサワラバーマウスピースは、厳選されたハードラバー材を使用し、かつ精度の高い加工工程と熟練した職人による仕上げをおこなうことで、安定した高い品質を実現しています。
ヤナギサワラバーマウスピースの重要な個性のひとつは、その鳴りの良さにあります。
口から吹き込んだ息が、どれだけ効率良く「サックスのサウンド」に変換されるかが、マウスピースに求められる大切な要素のひとつですが、ヤナギサワラバーマウスピースは多くの高性能な著名マウスピースの中でも、トップクラスの「鳴りの良さ」が評判です。
つまり少ない息でもサックスが大きな音で鳴ってくれるわけです。「他のブランドのマウスピースを使っていた人がヤナギサワラバーマウスピースを吹くと、同じ息の量とスピードでも倍の音量が出る」、などと言われるほど、ヤナギサワラバーマウスピースの鳴りの良さには定評があります。
呼吸法が確立していない初心者の方でも、ヤナギサワラバーマウスピースを使えば、十分に楽器を響かせることができると言って良いでしょう。また上級者でも楽器をねじ伏せて鳴らす必要が無いので、音質や表現力のコントロールに集中することが出来ます。
これはヤナギサワ独自のラウンドバッフル形状(リードの反対側のマウスピースの天井の形状。ここで息をまとめます。)と円形スロート(リードが振動させた空気を整えるマウスピースの中心部)など、ヤナギサワ独自の設計と上質な材料の特性、そして入念な製造工程によって実現されたものです。
サックスプレーヤーのジャンルで言えば、クラッシック、ブラスバンド系のプレーヤーのほぼ100%がラバーマウスピースを使用していると言って良いでしょう。
その理由は音質の透明度や、サックスの種類の違いによる音質の差がラバーマウスピースでは最小で済むこと、また音程のコントロールがし易い、など各種の要素が考えられますが、簡単に言えば、「いちばんサックスらしい音がでるマウスピース」ということになるのではないでしょうか。
決して長いといえる歴史を持っていない近代楽器サックスは、ラバーマウスピースとともに設計されたともいえます。それゆえにラバーマウスピースがサックスと最高の相性を持っているのです。楽器に付属しているマウスピースが必ずラバーマウスピースなのは、単なるコストだけの理由ではありません。
そのサックスの音に耳を傾けるには、まずラバーマウスピースが必要なのです。他の非金属系マウスピースやメタルマウスピースは、サックスのサウンドに「プラスアルファの個性」を求めた結果です。それゆえポピュラー系、ジャズ系では極めて多様な材質のマウスピースが使用されています。がしかし、「ラバーは吹いたことが無い」なんてサックスプレーヤーは皆無です。基本ですから。
ヤナギサワラバーマウスピースのサウンドは、伸びやかで艶があり、はっきりとした音の輪郭と芯を持っています。
クラッシック系の最右翼をセルマー系のラバーマウスピースとすれば、それよりもやや骨太なサウンドと評価できるかもしれません。それゆえにクラッシック、ブラスバンド系のみならず、ジャズやポピュラー系音楽でも多くのプレーヤーに愛用されています。またヤナギサワラバーマウスピースは、音程の正確さも特筆するものがあります。このように、「鳴り易さと正確な音程」というサックスのマウスピースに求められる基本性能を高いレベルで実現したヤナギサワラバーマウスピースは、「まずは一本」のサックスマウスピースと言えるでしょう。
ヤナギサワラバーマウスピースのラインナップは、バリトンからソプラニーノまで広く揃っています。キャップ、リガチャー(締め金)は付属しておりませんが、ヤナギサワから専用のリガチャー、キャップが別売で用意されています。製品の価格はミドルレンジの部類のものであり、その品質・仕上げ精度を考慮すると、高いコストパフォーマンスの製品と言えるでしょう。
高音域から低音域まで、鳴りのバランスを追求し設計されたマウスピース。
従来のモデルと比較しても、スムーズに息が入ります。
開き
SC120⇒1.20mm(セルマーS80 C★相当)
SC130⇒1.30mm(セルマーS80 D相当)